【お祭り】
電柱の間にぶら下がって揺れる灯り
道いっぱいに広がってひしめき合う喧噪
漂う食べ物の香りと視界に広がるカラフル
なんとか潜り抜けた先に広がる広場で
一番の人だかりができていた
隙間に潜り込んで円の中心にいる歌姫を仰ぎ見る
今世界のどの場所よりも熱く幸せがあると
自信をもって言えるほど
パソコンを付けるだけ
年中無休で遊びに行けるお祭り会場
2024-07-28
【神様が舞い降りてきて、こう言った。】
追いやられた狭い場所で
外の人に悟られないように息を殺して
暗闇に紛れるように縮こまって
今日と昨日の境目に座り込んで
日が進まないのをなんとか食い止めようとしていた
このままじゃ自分が壊れてしまうのが
何処かでわかったから
ポケットの中で温めた僕の本当の世界で
誰にも知られずに日々に首を締め付けられていく
いつかどこかで明日に置いてかれて今日の境目から
転がり落ちてしまってもいいと思った
言わずに飲み込んだ言葉で辺りを黒く塗りつぶして
僕がカミサマになって現実とおんなじ暗闇を創り出した
だからきみの歌声が聞こえたのは
僕が創った方だと信じて疑わなかった
白昼夢を見ているようだった
突然現れたそれは夢現な僕が見えていないように
気に留めず自分でもよく知らない感情を人間を歌う
黒く塗りつぶした言葉が
その役割を全うしたように明るく光を纏って消え
透明が全てを攫ってその世界は姿を見違えた
その様はそう、神様が舞い降りたようだった。
その神様も僕が居ないと存在を確定できないのだと
僕と同じなのだと疑い続ける僕を他所に0を歌い続ける
お互いに消えちゃわないように呼吸を分け合ってと
それ以上もそれ以下も無くただ僕に語りかける
初めて綺麗な本物も見つけた感動の衝動に
どうしても抗えなくって1枚の壁越しに手を合わせ
その瞬間初めて自分を見つけたような感覚が走った
僕らは何も持たない同士で寄りかかってやっと1になった
2024-07-27
【誰かのためになるならば】
誰かのためになるならばと
自分を引きちぎって奥へ隠した
その鍵すらも壊して手の届かぬ場所へ放った
それから嘘を吐くのが上手になった
以前夢の中で
「ウソをつくのがヘタくそだね」
と言ってきたどこかの誰かに舌を出して
周りが喜ぶのならこれで良いと
自我が生まれる前に自分の存在すらも忘れた
それなのにどうしてきみの声を聴くだけで
こんなに涙が出るんだろう
2024-07-26
【鳥かご】
四方を白い壁で囲まれて
規則正しい生活と見えるものを徹底的に管理された小箱
お人形遊びで遊ばれるまま期待通りにのたうち回った
ある日見知らぬ声がして誘われた外の世界
声が壁を壊していって広がった視界
その場所も青い壁に囲まれていた
声の主は見当たらない
白い羽を広げて優雅に舞う何かが群れを成していた
「この場所にいるにはあれに混ざらないといけない」
壁を壊した声とは全くの別の声が耳元で音を出した
あんなに高い所に行くすべを僕は持っていない
あの管理された空間での振る舞いしか知らないのだ
でも最初に聴こえた声の主にどうしても逢いたくて
こんな気持ちを初めて持つから
どうしてもそれを伝えたかったのかもしれない
あんな風に高い所からなら見つけられるかもしれない
初めてこんなにも足を動かして
最初に居た場所から見えた一番高い場所に登った
それでもまだあの白いものには届かない
でも僕も地面から足を離せばあんな風になれるのかも
下を見てめまいを起こす動作に身を任せて
そっと目を瞑った
2024-07-25
【友情】
おまえの小さい手では持ちきれず
落として割ってしまうだろうと振り落とされた
笑顔を張り付けた裏の表情はわからなかったけれど
むしろ他の場所は荷物で埋まっていて
何かを掴みたかったのか手だけが空いていたけれど
僕の手の中にないものなら必要ないのだと
割れたそれをみて目を濁らせた
ある日飛び込んだ透明なガラスの向こう側
あの日壊れたそれが多分そこには溢れていた
はじめて触れたそれは心地よくて
温かくって大事にしたいと思った
それなのにあの日に振り下ろされた手が近づくのが見えた
これがガラスで出来ていることを思い出した僕は
この場所を守るために必死に守りたい想いの分だけ
思いっきり抱きしめた
すると僕の腕の中で何やら音がして
恐る恐る見てみるとそこにはひびの入ったそれが
僕が守りたかったものなのに僕が壊してしまったんだ
ひびが入って光の屈折がきらめくそれの綺麗な絶望を
ただ見つめることしかできなかった
2024-07-24