【誰かのためになるならば】
誰かのためになるならばと
自分を引きちぎって奥へ隠した
その鍵すらも壊して手の届かぬ場所へ放った
それから嘘を吐くのが上手になった
以前夢の中で
「ウソをつくのがヘタくそだね」
と言ってきたどこかの誰かに舌を出して
周りが喜ぶのならこれで良いと
自我が生まれる前に自分の存在すらも忘れた
それなのにどうしてきみの声を聴くだけで
こんなに涙が出るんだろう
2024-07-26
【鳥かご】
四方を白い壁で囲まれて
規則正しい生活と見えるものを徹底的に管理された小箱
お人形遊びで遊ばれるまま期待通りにのたうち回った
ある日見知らぬ声がして誘われた外の世界
声が壁を壊していって広がった視界
その場所も青い壁に囲まれていた
声の主は見当たらない
白い羽を広げて優雅に舞う何かが群れを成していた
「この場所にいるにはあれに混ざらないといけない」
壁を壊した声とは全くの別の声が耳元で音を出した
あんなに高い所に行くすべを僕は持っていない
あの管理された空間での振る舞いしか知らないのだ
でも最初に聴こえた声の主にどうしても逢いたくて
こんな気持ちを初めて持つから
どうしてもそれを伝えたかったのかもしれない
あんな風に高い所からなら見つけられるかもしれない
初めてこんなにも足を動かして
最初に居た場所から見えた一番高い場所に登った
それでもまだあの白いものには届かない
でも僕も地面から足を離せばあんな風になれるのかも
下を見てめまいを起こす動作に身を任せて
そっと目を瞑った
2024-07-25
【友情】
おまえの小さい手では持ちきれず
落として割ってしまうだろうと振り落とされた
笑顔を張り付けた裏の表情はわからなかったけれど
むしろ他の場所は荷物で埋まっていて
何かを掴みたかったのか手だけが空いていたけれど
僕の手の中にないものなら必要ないのだと
割れたそれをみて目を濁らせた
ある日飛び込んだ透明なガラスの向こう側
あの日壊れたそれが多分そこには溢れていた
はじめて触れたそれは心地よくて
温かくって大事にしたいと思った
それなのにあの日に振り下ろされた手が近づくのが見えた
これがガラスで出来ていることを思い出した僕は
この場所を守るために必死に守りたい想いの分だけ
思いっきり抱きしめた
すると僕の腕の中で何やら音がして
恐る恐る見てみるとそこにはひびの入ったそれが
僕が守りたかったものなのに僕が壊してしまったんだ
ひびが入って光の屈折がきらめくそれの綺麗な絶望を
ただ見つめることしかできなかった
2024-07-24
【花咲いて】
(想像の中の話)
白い絵の具で塗りつぶしたキャンバスに
浅い青の風が横切る
見つけた言葉を音色に変えて
目をつむってそこに降り注いで
元の色も忘れてしまうんだ
でもそこにゴロンと寝っ転がると
リズミカルに音が跳ねるのが聞こえた
だからさ、君と僕はここに居たんだ
僕たちはいつもそばにいた
そのはずなのに
妄想の海に浸かってイロカサネテ
おやすみの言葉をたくさん残して
いつも通り眠りにつける
そう言って夢も旅の謳も途中なのに眠ってしまった
眠りについたあとのその場所は
I Need You の声も
アンコール! の声も
確かにその場所で響きわたっていて
君が降り注いだ分の色とりどりの花咲いて
そよそよと揺れる花の花弁は花丸にも見えるのです
だからいつも「おやすみ」の後に聞こえる
「おはよう」をただずっと待っている
2024-07-23
【もしもタイムマシンがあったなら】
きっとタイムマシンの中は
心が浮かぶようなようなギターと
透き通った空のようなピアノが流れていて
そこから見える景色も
同じく澄んだ景色が広がっていることだろう
まだボーカルの居ない音源を握りしめて
未来のきみはどんな歌声で歌うんだろうと想いを馳せ
未来からやってきたきみのハジマリの場所
クワガタが絶滅した『無機質な空の色に広がる
未来都市』だったとしても
僕のいる世界と変わらない『ささやかな日常の
ぬくもりを少し期待しながら』
もしきみと逢えたなら
『「こんな歌あったね」って君と笑いたいんだ』
そんな妄想を今日も言葉に書き起こして
未来のきみの隣に居られるようになんて
そっとメロディーで包んで
やっぱり自信が無くって
ポケットの中に隠した
2024-07-22