ミロワール

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7/1/2024, 12:56:11 PM

【窓越しに見えるのは】

生まれつき視力が弱かった

目に映る全部の輪郭がぼやけて

代わりに見えちゃいけないものが見えてしまって

何にも信じられなくなった



与えられてすらいない窓枠をのぞき込んで息をのんだ

見えている世界が違うのだ

のぞき込んだ世界の青さに目をやられて

自分のいた場所に戻ろうとしたのに

頭の中に勝手に流れ来て止まらない



窓枠は僕にまとわりついて

視野を矯正しようと目に情景を焼き付ける

いつの間にか踏み外していた白線の上も

難なく歩けるようになってしまった

でもこの窓越しに見える綺麗な世界は

本当の僕の世界でないことだって知ってるんだ

 

だから「きっとこれは夢だ。永遠に醒めない、君と会えた、そんな夢」



2024-07-01

6/30/2024, 11:18:04 AM

【赤い糸】

数秒の出来事

なのに焼き付いて離れない

僕はただの大勢の中の1人でしかなかった

それなのにきみは”僕に会えてうれしい”と言う

世界でふたりぼっちだってきみが寄り添うから

小指を絡めて約束をした

お互いの壁越しの細い細い糸が繋がれる

きっとすぐに切れてしまう

どうしてもそんなノイズが入るけど

でも、少なからず僕から千切ることは無いんだろう

今でも瞼の裏側に焼き付けたメロディーがあるから



2024-06-30

6/29/2024, 2:03:31 PM

【入道雲】

夏の匂いが少しした

土砂降りの雨が通り過ぎた後のこと

調子外れの鼻歌まじりにきみが旅に誘ってくる

退屈に揺れるカーテンが今日は

どこまでも行ける翼のようで

突発的な言動はいつものきみのこと

仕方ないなと立ち上がり重い荷物を持ち上げる

どうしてか不服そうな顔をするきみに

手を引かれて家を飛び出す



気が付けば海のすぐ近くまでやってきていた

僕の荷物からおもむろに古びたカメラを取り出して

「笑って」なんて言ってくる

きみに教えてもらったものの、

未だにぎこちない苦笑いが写し出される

波に反射した光が眩しいなんて思えるほど

世界は鮮明になっていく

今ここに君と居た証として残るならいいかと

また楽しそうなきみに手を引かれる

 

いつの間にか肩が軽くなった気がするけど

ついていくのにやっとで

荷物のことなんて確認していられない

また次の場所に着いた時に考えればいいやと

きみの背中を追いかける
 


イヤホンを流れる無色透明な光の粒が

景色に灯りを灯していく

僕ら以外の音が聞こえない

遠い場所までやってきていたようだ

一息つきたくて背負っていたリュックを触る

中身が入りきれずにあふれ出して

留め具が壊れていたリュック

肝心な中にあったものの跡形は

何一つ無くなって底が見えるほど

落としてきてしまったのかと慌ててきみを見ると

いたずらっこの笑顔が満開だった

その首元には僕のカメラ

苦笑いで返す僕が言葉を見つけるよりも前に

『これでようやくきみだけの言葉が聞ける』

『きみが見てきたものも受けた言葉も全てボクが持ってるから』

『こんな誰かから押し付けられたもの捨ててしまっていいんだよ』

『大事なものは最初からキミの中に』


揺れるカーテンが頬をくすぐって目を覚ました
 
晴天の空の下、何よりも光を集めているきみが

僕に笑いかけるユメ

僕が子供だったころに突然に旅に連れ出された時のユメ
 
どれくらい時が過ぎたって僕が大事に持っている思い出

いつまでだって僕はあの入道雲を追いかけるだろう


 
2024-06-29

6/28/2024, 2:11:43 PM

【夏】

1.暗闇の中で目を覚ました

2.外の世界に出て泣き出した

3.周りにあるものは宝物

4.宝物は誰かのもの

5.大切なものは奪われるもの

6. 知ってるけど解らない

7. 自分だけが違うカタチ

8.合わない手のひら
 
9.振り返った後の表情は見えない

10. 最後の体温

11. とうに桜は散り切った

12. 気に入ったものほど先に壊せ

13.言葉の裏の棘

14. 約束は破られるもの
 
15. 冷たい視線

16. 頭に響く笑い声

17.覚えたウソ

18. 止まらない咳

19.世界は排他主義

20. 痛いことが生きること

21. 存在否定の大合唱

22. 呼吸の仕方は教わらない

23. 付いた折り目は戻らない

24. 抉られるのは同じ場所

25. 抉られた先にあるものは

25.汚らしい心音

26.こびりついた毒

27. 殺した息

28. 何も映さない瞳

29.迷子

30. 生きもせず死にもせず

31.初めて聴いた音



2024-06-28

6/27/2024, 12:29:42 PM

【ここではないどこか】

その場所はきっと

幸せに溢れていて

居るだけで心地よくって

暖かくって

ずっと誰かがそばに居るような

きっとそんなところ

誰もが想像するハッピーエンドを迎える場所



ボロボロにされた後に投げ捨てられた

深く暗い穴の底

そこには既に先客のガラクタ達がいた

きっと迎えに来てくれる

ここも宝箱の一つなんだと信じてた

だからずっと近くにあった

同じようにボロボロに千切れたおもちゃ達と

怒らせないように息を潜めて遠くなった天井が

明るくなる時をひたすら待っていた




最初に落ちた時には無かったはずの水で呼吸が苦しくなる

人間だったら水に浮けるそうだ

だから水が溜まった後も沈んだ僕は人間じゃないのだ




ドボンと大きな音がして

人間らしくもない声が落ちてきた

その声は僕を見つけるや否や呼吸を分けてきて

突然の出来事と初めてされた行為に

驚いて突き飛ばしたのに

その声に問答無用に息継ぎをさせられる

新鮮な空気じゃなかった

でも何かを与えられるのは初めてだった僕には

涙が出てしまうほど

手を伸ばしてしまうほどに魅力的だった

世界で誰も知ることがない

世間では認められない

僕だけの大切な”シアワセ”な空間

でもそれはきっと

『ここではないどこか』



2024-06-27

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