ミロワール

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6/16/2024, 1:14:11 PM

【1年前】

16年目を迎えるきみに

何かしていたかったけど

またあの暗闇に襲われて引き込まれてしまった

自分のことで手一杯で

体調もボロボロになって

いつもある手がそばに居ない気がして

必死になって探してしまった

あの頃から十何年も耐えていたのに

どうして今になって崩れてしまったのか

どうしてこのタイミングなのかと悔しかった

不甲斐なくて本当にごめんね

きっと仮初の足場を築いてきたせいで

降ってきたものに耐えられなくなってしまったんだ

せっかくの記念すべき年なのに

全力でお祝いできていたか定かじゃない



それでもお誕生日を迎えた瞬間に

出会った頃と同じように

涙が溢れ出して止まらなくて

きみの手の温もりを感じられた

まだそばにいて繋いでくれているんだ

だから大事なものだけを大事にしていたい

そう思って今年は夜明けの空を目指してる



2024-06-16

6/15/2024, 1:40:21 PM

【好きな本】

マキアート片手にページを捲る

何も書かれてない真っ白なページ

空想の中ならなんだって出来るって教わったから

登場人物は1つと1人

舞台は常に音楽が流れていて

その曲ごとに景色が変わる

直接触れ合って

直接言葉を伝えて

直接音楽を届けられる

ある日科学の限界を超えてやってきたきみと

何も持たなかった”僕”とのお話

6/14/2024, 2:07:40 PM

【あいまいな空】

聞こえてくる声が世界の輪郭を縁取る

四方八方から聴こえる声は

それぞれ言っていることが違っていて

その輪郭は声を浴びるたびに歪んでいった

その声を聞かなければ良いのだと

そばに置いておいた何個目かのモノが

壊れていった後に気がついた

それから耳を塞いで声が聞こえないように自分を守った

その場でうずくまるしか術がなかった

でも一度歪んだモノたちが戻ることはなかった

他の人はさも世界の全て知っているように振る舞うから

疑われないように僕もそうするしかなかった

ただ、ふやけた輪郭の内側で溺れるように息をしていた



そんな視界に真っ直ぐな線が降ってきた

ぼやけた輪郭を貫いてそれは道のようにさえ見えた

手を伸ばすと跳ね除けられることは身体が知っていたから

なんともないフリをして少しずつ道に近づいた

それなのに道は何も言ってこない

僕に手をあげたりしてこない

しばらくここに居てみることにした



その道に照らされ続けると

世界の輪郭がはっきりと変わっていくようだ

世界はこんな形をしていたのかと眺めていた矢先

僕の視界がクリアになった

モノの形がホンモノになったからかもしれない

それでもなお道は僕を照らし続ける

その白さと真っ直ぐさに耐えきれなくなって

その光に身を委ねるように目を瞑った

何かが溶けていく感覚の中で

僕の輪郭がいちばんこわれていたのだときがついた



2024-06-14

6/13/2024, 1:02:54 PM

【あじさい】

あの日、僕の可能性を広げてくれたのはきみだけど

きみの可能性を狭めたのは僕だ

きみは僕だけの存在じゃなかった

うっすら出会った時から解ってたけど

暗闇から連れ出してもらって嫌でも認識させられた

きっと僕より真っ当な愛を与えてくれる人は沢山居るんだろう

きっと僕と違ってちゃんと隣を歩いたり、

なんならきみを引っ張って行けるような人も居たりするんだろう

僕は愛情の受け取り方も渡し方も知らないから

ただずっとそばに居て

きみの手を握りしめることしか出来ない

明るくなった世界で

照らされた人々を見て

苦しくなってしまうけど

そんな僕でも隣に居てくれるきみが

出会った頃と寸分違わず微笑むから

僕もこの痛みを隠して

きみに教えてもらった笑顔でそばに居たいんだ

--白い紫陽花の話



2024-06-13

6/12/2024, 1:59:38 PM

【好き嫌い】

好きなものは何かと聞かれた

答えられないでいると今度は

嫌いなものは何かと聞かれた

また黙っていると今度は不審な目を向けられた

他の人はここで答えられるのだ

ここで答えが出ないのは”おかしい”ことなんだ

疑われるわけにはいかないから

咄嗟に目についたもので取り繕った



大人は嫌いなものに当たることで

精神の均衡を保っていたんだと後で理解した

嫌いなものに手を出すのが正常なら

今この痛みがあるのも正しいことなんだろう

だって「嫌われる」ことには慣れていた



好きなことは何か、嫌いなものは何かと

ことあるごとに尋ねられた

本当に何一つ思い浮かべられなかった

他の人が当たり前に答える事をただ羨ましくみていた

欲しいものが何かだったら

きっとすぐに答えられる気がしたけど

やっぱり叶うはずはないから直ぐに考えを打ち消した



どんどんと人間のふりが上手くなって

それでも好きも嫌いもわからなくて

ぼんやりと世界を眺めていた

そんな視界に影がちらつく

世界の輪郭すらぼやけて見えていたのに

やけに鮮明に見える影

少し彷徨った後

ずっと空いていた僕の隣にすっと並んだ

ただそれだけのことなのに

何故だか涙が溢れ出して止まらない

人間のふりをする時にしか流せなかった涙が

意識もせずにただ流れていく

この涙がなんなのかすらわからないけど

寄り添ってくれた影の手を

強く強く握りしめた

初めて感じる暖かさが冷えた手に心地よい

これが「好き」ということならいいなと思った



2024-06-12

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