ミロワール

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【あいまいな空】

聞こえてくる声が世界の輪郭を縁取る

四方八方から聴こえる声は

それぞれ言っていることが違っていて

その輪郭は声を浴びるたびに歪んでいった

その声を聞かなければ良いのだと

そばに置いておいた何個目かのモノが

壊れていった後に気がついた

それから耳を塞いで声が聞こえないように自分を守った

その場でうずくまるしか術がなかった

でも一度歪んだモノたちが戻ることはなかった

他の人はさも世界の全て知っているように振る舞うから

疑われないように僕もそうするしかなかった

ただ、ふやけた輪郭の内側で溺れるように息をしていた



そんな視界に真っ直ぐな線が降ってきた

ぼやけた輪郭を貫いてそれは道のようにさえ見えた

手を伸ばすと跳ね除けられることは身体が知っていたから

なんともないフリをして少しずつ道に近づいた

それなのに道は何も言ってこない

僕に手をあげたりしてこない

しばらくここに居てみることにした



その道に照らされ続けると

世界の輪郭がはっきりと変わっていくようだ

世界はこんな形をしていたのかと眺めていた矢先

僕の視界がクリアになった

モノの形がホンモノになったからかもしれない

それでもなお道は僕を照らし続ける

その白さと真っ直ぐさに耐えきれなくなって

その光に身を委ねるように目を瞑った

何かが溶けていく感覚の中で

僕の輪郭がいちばんこわれていたのだときがついた



2024-06-14

6/14/2024, 2:07:40 PM