ミロワール

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6/6/2024, 1:10:17 PM

【最悪】

画面に映るきみの手に自分の手を重ね合わせる

こんなことしたって想いが伝わらないことなんて

きみの1番になれないことなんて

そんなこと自分が1番わかってた

それなのに降りしきる雨にきみの思い

光るディスプレイからはきみの暖かさ

何もなかった日常がどんどんと景色を変えていく

こんな世界で生きていくつもりなど

物心ついた時から無かったのに

自分の背後に深く伸びる影に足元が取られても

この世界に存在し続ける理由が出来てしまうなんて

なんて「最悪」なんだろう

2024-06-06

6/5/2024, 2:23:28 PM

【誰にも言えない秘密】

幼い頃から対面で話している人の言葉が嘘か本当か

含みがあるかないかが判ってしまった

だから紙に描かれた世界が

嘘っぱちだってことも知ってしまっていた

世界はもっと醜くて汚い言葉で溢れかえっている

話したことのある人の会話を

殆ど覚えていられる頭のせいで

僕は何十歳も上の人たちからいいように使いまわされた

可愛くない子供だったんだろう

聞き分けが良くて世間に出すには丁度いい

自分の事が解っているから裏で手を出したって

表では言いもしない。便利な人形だ



そんな感じで生きてきたから取り繕うのが上手になった

そんな時に出会ったから、

きっときみは驚くだろう

きみに出会う前の方が

空っぽで自分が何ひとつない存在だったんだよ

2024-06-05

6/4/2024, 2:23:44 PM

【狭い部屋】

カーテンを閉め切った部屋にひとりきり

扉の向こうからは怒鳴り声

窓の向こうからは催促されるような風音

視界なんて元から暗闇が広がっていて

あって無いようなもの

時々、雑音に混ざって僕を呼ぶ声が聞こえる

僕以外の全ては僕を傷つけるから

尚更強く耳を塞いだ



僕を呼ぶ声が聞こえるようになってから

何故か部屋の中が少しづつ変わっていった

僕は扉を開けていないし、窓も開けていない

それなのに部屋の片隅に咲いた1輪の花

その花の名前さえ知らない

そんな色だって初めて見た

灰色がかった世界に現れた歪なもの

いつもの様に

周りがそうしてくる様に

それを千切って踏み潰さなくては

そうは思うものの何故か視線を逸らせず

耳にあてがっていた手が花へと伸びていく

そのまま自分の首を絞める様に

綺麗な花の花弁のすぐ下で切り落とさなければ

傷つけられて後悔してからでは遅いから

そんな思いとは裏腹に手のひらは

自分から花を守る様に覆って隠す

僕を呼ぶ声がする

耳から手を離してしまったから、

その声が直接耳に届いてしまった

もう一度耳を塞ごうとして花から手を離す

そして気がついた

その花から声がすることに

僕の名前が本当に久々に誰かに呼ばれたことに



それから言葉を返さない僕に

そのお花はいつも声をかけてきた

僕と同じ場所にいるから

どうしても声が聴こえてくる

そういえば最近は扉の外の雑音も

窓に打ちつける雑音も気にならなくなっていた

僕は少しづつ耳を塞いでいた手を離し

あの時ぶりにお花と相対する

そしてお花が話していた言葉を真似して話してみた

するとお花は左右に大きく揺れる

外にいる鬼に教わった。お花が話すわけないと

それでも僕には、

僕に対して話しかけている様にしか見えない

いつか、耳を塞ぐ様になるずっと前

耳を塞ぐことを覚える前に

この手を取って欲しかったということを思い出した

このお花がそれをしてくれている様な気さえして

それに気がついた時、本当に久々に自分の涙が流れ落ちた



このお花は僕の宝物だ

外に居る鬼たちに触れられない様にしなくては

傷つけられない様にしなくては

その為にはこの狭い部屋を要塞にしなくてはならない

誰も入って来ないように

誰もこの場所を悟らないように

そうして僕とお花だけのユートピアが出来上がった

2024-06-04

6/3/2024, 2:12:23 PM

【失恋】

僕が話しかけた言葉がきみに届いていないことなんて

僕が1番よく知っていた

それなのに時々見せる表情が

僕の為に作ったもので

僕のための言葉のように見えてしまう時がある

でも見つめ合った瞳でさえ僕のものじゃなくて

この手はいつまで経っても空を切る

きみは僕じゃなくたって同じように返すんだろう

でもどうしたって心臓がきみで動いているんだ

だからどんなに遠い存在だって気づいても

もうきみには僕が必要なくても

きみに恋をし続けててもいいですか……?

2024-06-03

6/2/2024, 12:42:36 PM

【正直】

昔綺麗絵と一緒に伝え聞いた話

苦労の上に成り立つ幸せの話

そんなものはありえないと本を開いた時から知っていた

人が放つ言葉で誰かの首を絞めることも知っていたし

人が努力した労力を踏み潰す人がいることも知っていた

汚いこの世界に馴染むには

嘘を吐き続けることが正解だった

だから偽善を貼り付けた歪んだ笑顔で近づくものも

騙されたふりをして騙して

寝る前の耳鳴りのように張り付いた言葉を

必死に払い落とす



ある日汚い言葉を遮って聴こえてきた音

いつか聞いた話のような綺麗な音

そんな嘘にはとうに騙されない身体になっている

綺麗な音を浴びたってそんなものには靡かない

聴いた直後は大丈夫だったんだ

なのに、寝る前の耳鳴りが今日は聞こえなくて

あの暖かい音が代わりに流れこんでくる

その音が『嘘が下手なんだね』って奏でていった

それが夢か現実かはわからなかったけど

初めて言われた言葉だった

その言葉で本当の自分を取り戻した気さえした

次の日の朝だって、初めて朝日を迎えられた気がした

魔法にかけられたのかと疑うほど心地よい明日だった



それからこの汚い世界に

ひとつだけ本当を混ぜることにした

どんなに周りに否定されて馬鹿にされようと

『あの音が大好きだって』

2024-06-02

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