『1000年先も』
「有為転変」という言葉が好きです。
「ういてんぺん」と読み、「万物が常に変化してやまないこと」という意味があります。
毎日、空はあるし、月も太陽も星も確かに存在しているから、変わらないように見えますが、今日の空は今日だけの空です。わたしたちも、同じです。
なので、1000年先も変わらずに有為転変であることでしょう。
(余談:辞書にはありませんが「万法流転」(ばんぼふるてん)という宮沢賢治の言葉から、「有為転変」にたどり着き、好きな言葉の1つになりました。)
『勿忘草』(創作)
「忘れる、忘れない、忘れる、忘れない…」
勿忘草の小さな青い花たちに願いを込めて呟いてみる。
花占いは花弁を引き抜くけれど、勿忘草の小さな花に、そんなことは出来なくて、わたしは花を数えるように呟いていた。
「忘れる、忘れない…」
ごめんね。もう占うのはやめよう。
わたしは忘れるつもり。忘れなくちゃ。
だから「忘れないで」なんて言えない。
─ 忘れて、いいよ ─
静かに落ちる涙は、勿忘草を濡らして消えた。
『ブランコ』(創作)
飲みすぎた。
夜中の路地裏、駅までの道をフラフラと歩きながら今夜の飲み会の余韻に浸っていた。顔がニヤけてしまう。
大学時代の集まりだった。いつも見慣れた面子だけだと思っていたら、今日は珍しい人が来ていたから、張り切って飲み過ぎてしまった。
─相変わらず、美しく凛とした女性だったな─
大して話すことも出来なかったが、それでも、顔がニヤけてしまう。眼福とは、こういうことを言うのだろうと、考えながらフラフラと歩いていたら、目の前に小さな公園が現れた。ブランコが風に揺れている。
「あーだめだ。飲みすぎた。ちょっと休もう。」
誰に言うでもなく、ブランコに乗る。
─ブランコって、こんなに小さかったかな─
と、思うほど、ブランコは小さかった。窮屈さを感じながら、座ったまま揺らしてみる。
「うっ。やばい。」
込み上げる吐き気に、目眩がした。激しい目眩に意識が遠のく感覚の中、微かに誰かの声が聞こえた。
気が付くと、病院だった。
なぜか病室の隅から、憧れの彼女が、心配そうにこっちを見ている。
「大丈夫?わたしが、救急車を呼んだの。忘れ物を届けに追いかけたら、倒れていたものだから。」
僕は青ざめた。格好悪くて、穴があったら入りたかった。
そんな気持ちを知ってか知らずか、彼女は毎日病室に来てくれた。
そんな訳で、妻との馴れ初めは「ブランコ」なのだ。
『旅路の果てに』(創作)
谷越えて
戻れぬ道を
突き進み
旅路の果てに
見るのは夢幻
山超えて
歌はずむ道
スキップで
旅路の果てに
あなたの笑顔
海またぎ
舟漕ぎ出れば
大嵐
旅路の果てに
財宝の山
お題が七音だったから、短歌にしてみました。
短歌って、あまり作ったことがないので、作り方も合っているのかすらわかっていませんが、、、
とりあえず五七五七七です。
『あなたに届けたい』
わたしに全能な力があるなら、地獄に光を届けたいです。
希望に満ちた明るい一筋の光を、地獄にいるであろうあなたに届けたいです。
「わたしはあなたが好きです。もう苦しまないでください。」と、添えて。
生前に伝えられていたら、母は生きていたかもしれないのですが、運命とは残酷なものです。会えるチャンスすらなかったのですから。