【178,お題:タイムマシーン】
タイムマシーンがあったとしたら、僕は過去の僕に言いたいことがあるんだ
重大な間違いをしました、未だに色褪せない後悔に苛まれて生きています
もし過去に戻れるのなら、その間違いを正したい
そしたらこんなに苦しまなくてすんだんだから
【177,お題:特別な夜】
いつもの夜が、今日だけは特別な夜
あなたが隣に居るから特別な夜
【176,お題:海の底】
冷たく暗い海の底では、どんな照明も役には立たない
一寸先は闇、自分の鼻先すらも見えない程の濃い黒
その中で小さくうずくまって目を閉じる
目を開けてても閉じてても変わらないのなら、少しでも楽な方を選ぼう
寒さに眠ることも出来ない、静かに目を閉じたまま闇と一体となって
このままエンドロールまで行こうじゃないか
埋め尽くされた黒の隙間、僅かに目を開いても見える景色は変わらない
「誰か見付けて下さい」と、囁いたのはどこの誰か......
【175,お題:君に会いたくて】
街の夜景を見た時、絵を描いている時、朝ご飯を食べている時
日常のふとした瞬間にいつもちらつく光景がある
僕のとなりはいつも一人分空いていて
その空白に向かって話し掛けようとして、何度言葉を飲み込んだか
君はもういない、この世界のどこにも
どんなに会いたいと思ったことか、朝も昼も夜もただそれだけ思い続けていた
君に会いたくて、どんなところにも行ってみたけど
会うことは叶わなくて、当たり前だよね
距離なんてものが届かないほど遠い場所に君は居るんだろう
「会いたい」
一人分空いたベット、一人分減った食事、一人分減った会話
その一人分が僕には何十人分にも重く感じられて
埋まらない隙間を抱えたまま、死んだような生活を続けている
叶うならば、他に何を失っても良いからオレからあの子を取り上げないで
君に会いたいよ、隠れてないで姿を見せてよ
広く寒いベットで一人横になり、静かに息を止めた。
【174,お題:閉ざされた日記】
机の上にのった一冊の本、なんとなく視界に入れたそれは
茶色い表紙にベージュで四角い模様がいくつか描かれており
そこに特に意味もないであろう、お洒落な外国語の羅列が書いてある
仕事はもう終わっている、早く帰らなければならない理由はないが特段長居する理由もない
だがオレはその本を手に取った、普段ならばすぐにこの場を去っただろうがほんの気まぐれだった
表紙を開く、数ページ捲ってみるとどうやらそれは日記らしかった
そして、オレはすぐにそれを開いたことを後悔した。
綴られていたのは、ただの平凡な家族の日記
日によって言葉遣いや字の形が違うため、家族で交換日記のように書いていたのだろう
手の中の日記帳がズンと重みを増した気がした
急に呼吸が出来なくなった気がした
繰り返し文章を眺め、反芻し小さく口に出した
やがて日記帳を閉ざしそれを持ったままふらつく足取りで外に出た
理解を拒む脳が身体中に誤信号を伝達して
視界は眩み、内蔵を引っ掻きまわされるような気持ち悪さと
割れるように痛む頭が、真っ直ぐ歩くことさえ不可能にしていた
日記帳は固く閉ざして裏路地のごみ捨て場に放り投げて帰った
薄いシーツを頭からかぶって部屋の隅で身体を縮める
さっさと忘れよう、ようやく自由に慣れたんだから