無音

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【174,お題:閉ざされた日記】

机の上にのった一冊の本、なんとなく視界に入れたそれは
茶色い表紙にベージュで四角い模様がいくつか描かれており
そこに特に意味もないであろう、お洒落な外国語の羅列が書いてある

仕事はもう終わっている、早く帰らなければならない理由はないが特段長居する理由もない
だがオレはその本を手に取った、普段ならばすぐにこの場を去っただろうがほんの気まぐれだった

表紙を開く、数ページ捲ってみるとどうやらそれは日記らしかった

そして、オレはすぐにそれを開いたことを後悔した。

綴られていたのは、ただの平凡な家族の日記
日によって言葉遣いや字の形が違うため、家族で交換日記のように書いていたのだろう

手の中の日記帳がズンと重みを増した気がした
急に呼吸が出来なくなった気がした

繰り返し文章を眺め、反芻し小さく口に出した
やがて日記帳を閉ざしそれを持ったままふらつく足取りで外に出た

理解を拒む脳が身体中に誤信号を伝達して
視界は眩み、内蔵を引っ掻きまわされるような気持ち悪さと
割れるように痛む頭が、真っ直ぐ歩くことさえ不可能にしていた

日記帳は固く閉ざして裏路地のごみ捨て場に放り投げて帰った

薄いシーツを頭からかぶって部屋の隅で身体を縮める
さっさと忘れよう、ようやく自由に慣れたんだから

1/18/2024, 10:37:32 AM