【163,お題:雪】
手に乗せた雪は程よい冷たさを残して静かに無くなっていく
指の隙間を伝って溢れる涙にも似た水滴
それを少しの間ぼうっと眺めてから、手を振って水滴を払い落とすと
その人はまた歩きだした。
【162,お題:君と一緒に】
君と一緒にどこまでも行きたい
ずっと側に居るのは僕がいいし、大好きも愛してるも全部独り占めにしたい
いつまでも笑っていてほしいし、どこの誰よりも幸せになってほしい
妥協でも代用でもない、君という人間がたまらなく愛おしい
君と一緒に居たい
いつまでも、何があっても側で守り続けたい
【161,お題:冬晴れ】
木枯らしが吹かず、昼間は少し暖かいそんな日
こぎつねがひょこひょこと森を歩いていた
一歩進む度に細い脚が雪に沈む、その感覚が珍しく
泳ぐようにして大雪が積もった森のなかを、ひょっこひょっこと不格好に歩いた
『こんにちは、何をしているの?』
雪に埋もれていると、すぐ横から小さな声
見ると、こうさぎが首をかしげて雪の上に座っていた
『こんにちは、散歩をしているんだ』
ひょっこりひょっこり、雪に脚を取られながらこぎつねが進む
ぴょこぴょこぴょこ、雪の上を軽々と移動しながらうさぎが追う
『歩きづらくないの?』
『すごく歩きづらい。...ところで、君は何でそんなに軽々と動けるの?』
こぎつねはこうさぎの脚に注目した、こうさぎの脚は短くて平べったい
より多くの面が雪をとらえ沈みにくくなっているのだ
加えてこうさぎはこぎつねの身体よりもずっと小さい、身体が軽くて動きやすいんだろう
『僕の脚は特別だからね』
こうさぎがふふんと胸を張る、こぎつねはくしゅんと一つくしゃみをした
『雪で濡れたから寒くなってきた』
『それなら僕の家においでよ!』
ぴょんぴょんこうさぎが跳ねるので、キラキラと雪が飛んだ
『じゃあそうするよ、よろしくこうさぎ』
『うん、よろしくこぎつね』
ひょっこひょっこ、ぴょこぴょこぴょこ
2匹は並んで冬の森に消えてった
【160,お題:幸せとは】
とても悩ましいもの
考えようとしたら一生辿り着けないが
生きていれば
案外すぐとなりにあるもの
【159,お題:日の出】
夜眠るのが下手で、修学旅行の時も友達が寝ていくなか
徐々に1人になる寂しさを感じながら、ずっと起きていた
明日に響くから皆と早く寝よう
そう思って何回かチャレンジしたけど、言い表せないほどの強い不安感に
泣き叫びそうになる寸前で諦めた
幸いにも、深夜眠れずとも昼間眠くなることはない
多少目眩や、立ち眩みが起きやすくなるが、それは普段とあまり変わらないので問題ないだろう
暗い室内に敷かれた布団から1人だけ身を起こし、胡座をかいた状態でぼーっとしている
何時間もこうやって起きているが、もうすぐ夜明けだろうか?
時計を見上げても、もともと視力が悪い上に暗闇だと全く何にも見えない
「............!」
胡座でぼーっとしながら、何度目かに目蓋を開いたとき
周りの風景が少し見えやすいことに気付く
ぱちぱちと目を瞬いて窓の外を見やると、東の空が淡く白みだし日の出の瞬間がすぐそこまで来ていた
誘われるように窓辺に近付いた、薄紫、ピンク、どちらとも言えないような淡い色に空が染まる
夕焼けも朝焼けも、太陽が沈むか上がるかの違いなのに、朝焼けの方が圧倒的に安心するのは何でだろう
静かに窓を開け身を乗り出す、夜に冷えた空気が気持ちいい
日の出の瞬間、太陽が上がる 淡く優しい輝きが 力強く頼もしい光に変わる
以外と日の出ってすぐ終わっちゃうんだな、そんなことを考えながら
見惚れてしまうほどに美しい日の出の空を眺めていた
なんだか今日はいい日になる気がする
太陽の光って凄いなぁ...、美しい空を見上げ、くすりと微笑んだ