灯月

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8/6/2025, 12:25:32 PM

【またね】

ひとつの扉が静かに閉じて
やわらかな風が背中を押す。

ただいまと言える場所を胸に
選んだ道を、あなたは歩き出す。

手渡された小さな花束は
言葉にならなかった「ありがとう」と
まだ言えなかった「またね」を抱いていた。

すれ違い、交差し、分かれても
またどこかで、必ず会えると信じている。

だから今はーー
手を振って、笑って
「またね」。

8/5/2025, 11:24:29 AM

【泡になりたい】

しずくが弾ける朝の光の中で
わたしはただ、誰かの胸に
そっと触れる泡になりたい

深く沈むことも
流されることもせず
揺れる水面で 一瞬の煌めきだけを生きる

約束も
未来も
過去さえも溶かして

この想いだけを手紙にして
あなたの心に届けたら
すぐに、溶けてしまいたい

重さを捨てて、ただの愛になりたい
忘れられても構わない
それが、わたしの願いなの,

8/4/2025, 11:01:36 AM

【ただいま、夏。】

ぎらりと照り返す午後のアスファルト
傷を抱えたまま それでも
僕は またこの季節に戻ってきた

ほどけない思い
動けない日々
それでも心は 熱を失わなかった

誰にも届かなくていい
誰かに笑われてもいい
ただ、走りたかった
この夏に
もう一度、僕の名前を叫びたかった

怖かった過去も
閉じ込めた言葉も
全部 この風が吹き抜けていく

さあ、もう一度
太陽の下で叫ぼう
ーーただいま、夏。

8/3/2025, 6:37:21 AM

【波にさらわれた手紙】

潮の香りが満ちる午後
あの日、書きかけた言葉を
そっと封じて波へとゆだねた

伝えたかった気持ちは
風に乗って遠くまで届くはずだった
けれどそれは、空の流れにまかせて
いまはただ見送ることにした

形にはならなくても
想いはきっと、生きている
海の底で眠るように
大地の奥で脈打つように

忘れたふりをしていた願いが
風のささやきとともに目を覚ます
あの手紙は、まだ旅の途中
やがてあなたのもとに
新しいかたちで還ってくるだろう

だから、待つのではなく
感じていて
呼吸のように静かに深く

8/2/2025, 5:03:50 AM

【8月、君に会いたい】

蝉の声が遠くに揺れて
懐かしい記憶がふと胸をよぎる

あの夏の日
言葉にできなかった気持ちが
陽炎のように揺れていた

本当はずっと気づいていた
君のまなざしの奥にあるやさしさも
ただ静かに寄り添ってくれたやさしさも

目を逸らすことで守っていたものが
あると知ったのは
あの時じゃ遅すぎたのかもしれないね

でも、今なら伝えられる
あの夏より少しだけ強くなった自分で

8月
もう一度だけ君に会いたい
ほんの少しでも
あの時の続きを話せるように

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