『視線の先には』
入道雲にゆらり陽炎
視線の先にはなんにもなくて
ただ歩く 歩く 歩く
水筒は持った?
ランプは?
ナイフは?
食料は?
あぁ……靴だけを忘れてる
意味が無い
歩けない
無理なんだ
無理なんだ
灼けた線路を裸足で歩く
視線の先にはなんにもなくて
ただ痛い 痛い 痛い
飛行機雲が空を割る
それを綺麗と誰かが言った
汗の混じった息を呑む
気怠い気分で前を見る
視線の先にはなんにもなくても
なにかを求めて彷徨い続ける
証明がしたい
否定がしたい
「私の旅は無駄では無かった」
そう言えるのならなんでもいい
足裏がただれ
陽炎が邪魔をする
入道雲は変わらずそこで
こちらをじっと見下ろしていた
『終わりにしよう』
ほらねアルストロメリア
君が枯れそうなんだから
終わりにしよう
こんなこと
君はいつか言ったよね
あれは夏の日だったかな
僕は独りでいたのにさ
君が勝手に連れ出したんだ
──私と一緒に踊りましょう?
手を引いて
ステップ踏んで
リズムに合わせて
踊ってさ
恩着せがましく笑うんだ
白い歯みせて
輝いて
まるで今が幸せみたいに
もうさアルストロメリア
君も枯れちゃったんだから
終わりにしよう
こんなこと
君はいつか言ったよね
あれは夏の日だったかな
僕は独りでいたのにさ
僕は独りでいたのにさ……
──私と一緒に踊りましょう?
手を引いて
ステップ踏んで
リズムに合わせて
踊ってさ
恩着せがましく笑ってよ
白い歯みせて
輝いて
そうさ今が幸せなんだよ
終わりたくないよ
アルストロメリア
僕と一緒に踊ろうよ
君がいつか言ったから
あの夏の日に言ったから
僕が独りにならないように
君が踊ってくれたから
だから
だからっ
だからっ!
だからっ!!
──ありがとうアルストロメリア
もう……※※※※※※※
『私の当たり前』
【誕】意味:
1.子をうむ。うまれる。
2.でたらめを言う。でたらめ。また、でたらめを言ってあざむく。
みんながみんな信じてる
自分がいちばん正しいと
わからず屋なのはアイツの方で
自分はきちんと考えている
仕方がないから争うし
仕方がないから怒るんだ
みんながみんな善人で
自分がいちばん正しいの
生まれてきた日は祝うものだし
死んでしまったら弔うものだし
善人だらけの世界に落ちたら
死ぬまで争い生きてくものだし
私はきっと善人で
私はきっと正しくて
私がもしも悪い事をしたなら
それは仕方がなかった事なんだろうし
今日も何処かで誰かが祝う
誕生日
おめでとう!
……嫌な奴ですね
『世界の終わりに君と』
「「はじめまして」」
──初めて会ったその時から、僕は君のことが好きだったんだ。
──────────
「今日でこの世界が終わるらしいよ」
頬杖をつきながら君が言う。
心底つまらなそうな表情で、最近黒く染めた髪の毛を指でクルクルといじる君。
ぼーっとスマホを見るばかりで、視線をこちらに向ける気力もないようだ。
──よくある都市伝説の話題だろうか?
それにしたって楽しくなさそうだ。
少し考えを巡らせる。
「何か嫌なことでもあったかな?」
「別に……なんでもない。
ただ仮にこれが本当の話だったら、私とあなたは今日、いったい何をするのかなって。
……ほんの少し気になっただけ」
「そっか……そうだね、少し考えてみようか」
「そこまで真剣にならなくてもいいよ。
何となく思っただけなんだから」
君は少し躊躇いがちに僕を見る。
ようやく視線が重なって、それだけでじんわりと心が暖かくなった。
いつまで経っても僕は君が好きらしい。
「僕は君と話すのも好きだからね。
せっかくだから一緒に考えてみようよ。
それとも……あまり気分じゃないかな?」
「そんなことはない……けど」
「けど?」
「言い出しておいてなんだけど、やっぱり少し怖いかな。
私はあなたと過ごす今が幸せだから……それが終わっちゃうなんて嫌だよ」
そうしてまた目を伏せる君を見て、僕は愛おしさが込み上げる。
「……初めて僕達が出会った日のことを覚えてる?
お互いの挨拶が被ってしまって、気まずい空気が流れたよね」
「もちろん覚えてるよ。
あの時は緊張して……でも、私にとっては大切な思い出だから」
「僕も同じだよ。
あの日は僕"達"にとって大切な日なんだ」
──だから。
「仮に今日世界が終わったとしても、また次の世界であの日を繰り返せばいいんじゃないかな?
その後に今日の続きを過ごそうよ。
僕が生まれ変わったら、必ずまた君を見つけるから」
「……ありがちな台詞だね。
でもそっか……そう、ありがとう。
そういうことなら安心だね」
そう言って照れ臭そうに、君はにこりと微笑んだ。
──────────
『『はじめまして』』
──初めて会ったその時から、僕達はお互いのことが好きだったんだ。
『最悪』 210
もろびとこぞりて業を焼く
白いゼラニウムの花を
警告灯が朱色に染める
あなたの犠牲があって初めて
他人はあなたを求め出す
「止まれよ止まれ
止まりなさい」
『今さら何をおっしゃいますか』
揺れる花はチグリジア
気付いて欲しいとその身を捩る
雛鳥のように口を開けて
あなたは餌を待つばかり
『私を救って
助けて……お願い』
「今さら何をおっしゃいますか」
黒いカラスの羽が舞う
ノイズのように視界を覆う
無意味なものに気を取られ
観てないものが多すぎた
日が暮れた
気が触れた
湿った空気が
流れていった
もろびとこぞりて業を焼く
『止まれよ止まれ
止まりなさい』
『今さら何をおっしゃいますか』