『世界の終わりに君と』
「「はじめまして」」
──初めて会ったその時から、僕は君のことが好きだったんだ。
──────────
「今日でこの世界が終わるらしいよ」
頬杖をつきながら君が言う。
心底つまらなそうな表情で、最近黒く染めた髪の毛を指でクルクルといじる君。
ぼーっとスマホを見るばかりで、視線をこちらに向ける気力もないようだ。
──よくある都市伝説の話題だろうか?
それにしたって楽しくなさそうだ。
少し考えを巡らせる。
「何か嫌なことでもあったかな?」
「別に……なんでもない。
ただ仮にこれが本当の話だったら、私とあなたは今日、いったい何をするのかなって。
……ほんの少し気になっただけ」
「そっか……そうだね、少し考えてみようか」
「そこまで真剣にならなくてもいいよ。
何となく思っただけなんだから」
君は少し躊躇いがちに僕を見る。
ようやく視線が重なって、それだけでじんわりと心が暖かくなった。
いつまで経っても僕は君が好きらしい。
「僕は君と話すのも好きだからね。
せっかくだから一緒に考えてみようよ。
それとも……あまり気分じゃないかな?」
「そんなことはない……けど」
「けど?」
「言い出しておいてなんだけど、やっぱり少し怖いかな。
私はあなたと過ごす今が幸せだから……それが終わっちゃうなんて嫌だよ」
そうしてまた目を伏せる君を見て、僕は愛おしさが込み上げる。
「……初めて僕達が出会った日のことを覚えてる?
お互いの挨拶が被ってしまって、気まずい空気が流れたよね」
「もちろん覚えてるよ。
あの時は緊張して……でも、私にとっては大切な思い出だから」
「僕も同じだよ。
あの日は僕"達"にとって大切な日なんだ」
──だから。
「仮に今日世界が終わったとしても、また次の世界であの日を繰り返せばいいんじゃないかな?
その後に今日の続きを過ごそうよ。
僕が生まれ変わったら、必ずまた君を見つけるから」
「……ありがちな台詞だね。
でもそっか……そう、ありがとう。
そういうことなら安心だね」
そう言って照れ臭そうに、君はにこりと微笑んだ。
──────────
『『はじめまして』』
──初めて会ったその時から、僕達はお互いのことが好きだったんだ。
6/8/2024, 4:28:41 AM