ノーム

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11/9/2023, 4:52:27 PM

『脳裏』


素晴らしいほど残酷で、悲しいほどにつまらない。

自分で価値があると思っていたい経験ほど、人は無意識にその時の感情を忘れまいとする。
例えそれが悍ましい記憶であり、早く忘れてしまいたいと理性では考えていても、その醜悪な経験が無価値なものであったと、簡単に切り捨てることが出来ない。

……ただの理不尽で終わらせたくないと、もう一人の自分が駄々をこねるのだ。

記憶はいつか薄れていき、織り込まれた感情もそれは違わず。
この原則を遅らせるため、人は記憶の中の感情に少しばかりの色を付け足す。

焼き付いた虚ろな情景は、自分の見えざる矜恃によってのみ創造される。

あぁ……本当につまらない。

11/2/2023, 6:34:15 AM

『永遠に』


朝が来て
音楽が流れる
木の葉が揺らぎ
息を吸う

途切れ途切れのリズムで歩む
断続的に遠くまで

夜が来て
川が流れる
気持ちが揺らぎ
息を吐く

途切れ途切れのリズムで歩む
永続的に遠くまで

10/29/2023, 12:57:42 AM

『暗がりの中で』 180


『もう目が慣れた』とあなたが言うから、照らす理由が無くなった。
『照らさなくても見える』と言うから、照らす苦労も無くなった。

窺い知れないあなたの表情。
……わざわざ照らす理由は如何に。
誰かに理由を伺い立てる。
……己の責務と矜恃は何処に?

猫が鳴く。
虫が鳴く。
風が鳴く。

後悔しても時は戻らず。
自業自得と──が泣く。

10/24/2023, 9:57:04 AM

『どこまでも続く青い空』


雨の後は空気が澄んでいるという。

日が差す畦道で空を見上げた。
視界が全て青になる。

……手を伸ばす。
青がその手を透過する。

届かない。
掴めない。

嫌気が差して俯いたその先、足下の水溜まりにも青を見た。

……それを力の限り踏み付ける。

矮小な自分。
矮小な空。

爆ぜた青い情動は、留まることを知らず。
雨で冷えて湿った風が、どうでも良さそうに頬を掠めた。

10/21/2023, 4:41:01 PM

私事ですが、今日でこのアプリを始めて1年になりました。皆さんの【もっと読みたい】には、何時も温かい気持ちをいただいています。

……と、い・う・わ・け・で!

自分がこのアプリに投稿した第1作目、そのリメイクを書かせていただきました!
楽しんでいただけたら幸いです。

それではどうぞ!


『声が枯れるまで』


子供の頃は良かった
「楽しかったなぁ」

周りの大人が優しかった
「嬉しかったなぁ」

責任なんて無かった
「気楽だったなぁ」

それが今はどうだろう?
「…………あぁ」

周りの人は信用出来ず
「……そうだよなぁ」

責任だけが伸し掛る
「……もういいよなぁ」

──ガタンッ

足下の椅子を蹴り倒した


──────────


『──ギィィ』


子供の頃は良かった
「──ギィィ」

周りの大人が優しかった
「──ギィィ」

責任なんて無かった
「──ギィィ」

それが今はどうだろう?
「──ギィィ」

周りの人は信用出来ず
「──ギィィ」

責任だけが伸し掛る
「──ギィィ」

……どうして声が出ないのか?
「──ギィィ」

……あぁ、枯れたのか

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