『理想のあなた』
"ある朝、グレゴール・ザムザがなにか気懸かりな夢から眼をさますと、自分が寝床の中で一匹の巨大な毒虫に変わっているのを発見した。"
フランツ・カフカ 『変身』
この話……大ッ嫌いです!
~~以下ネタバレを含みます~~
ここまで自分の嫌いな要素が詰め込まれている作品は珍しいですね
コメディとハッピーエンドの皮を全く被りきれていない、胸糞の悪すぎる正真正銘のバッドエンドです!
異論は認めたくない!
けど……仕方がありません、認めてあげましょう!(傲慢)
この作品は冒頭でも書いた通り、主人公であるグレゴール・ザムザが毒虫になるところから始まります
……はい、この時点で最悪ですね
毒虫になってしまった事が嫌なのは当前ですが、それよりも何よりもグレゴールが特別な存在では無いことに自分は恐怖しました
グレゴールは何か特別な能力を持っていたわけではありません
特別変わった価値観でもなければ、特別変わった家庭に産まれたわけでもないんです
それなのに朝起きたら毒虫ですよ?
やってられませんよ、本当に
この作品が理不尽文学と呼ばれる所以ですね
強いて挙げるなら……そうですね、グレゴールは家族想いの好青年でした
理想の息子であり
理想の兄であり
理想の大黒柱でした
だからこそ、こんな作品の主人公に選ばれてしまったんでしょうね……クソ喰らえですっ!
…………コホン(咳払い)
まぁそんなわけで理想の家族の一員であったグレゴールは一転、悍ましくも簡単には見捨てられない邪魔者へと"変身"をとげたのです
途中の話は割愛します
色々あった結果、グレゴールは父に投げられた林檎が原因の傷で弱っていき、最後は家族にも見捨てられて一人孤独に死んでいきます
グレゴールはその時に理解するんです
自分がこれまで、どれだけ家族に愛されていたのかを……愛していたのかを
大きな家族愛とその幸せを理解しながら、グレゴールは天へと召されていきました
次の日、干からびた大きな毒虫の死骸をゴミに出した家族は清々しい気持ちで散策へと出かけます
そうして晴れた空の下……これからの輝かしい未来に向けて、家族みんなで思いを馳せるのでした
ハ・ッ・ピ・ー・エ・ン・ド
………………んなわけあるかいッッ!!
………………
…………(´ρ`*)ヴッヴン(咳払い)
なんかもう……ねぇ?
あれですよねぇ?
誰かに対して理想とか抱かない方が良い気がしますし、誰かにとっての理想にもなりたくないですね
……何でかまではイイマセンガ(小声)
別に怖がりというわけじゃないですよ?
夜中でも一人でトイレに行けますし?
……ん?朝起きたら毒虫になってる?
……ははっ、(ヾノ・∀・`)ナイナイ
所詮フィクションですよ?
そんな事あるわけないじゃないですか
…………ねぇ?
『恋物語』
二人が出会い
恋をして
色々あって
結ばれる
ハッピーエンドでございます!!
……あぁ、小さい
小さいなぁ……小さい
小さい
小さい
小さい……!
小さい……ッ!
なんっってしょうもない話でしょう??
よくもそんな事で一喜一憂出来ますよね?
アレですけど?
今も世界では戦争をしている国があって?
沢山の……アレです……悲劇とか?
いろいろ悲しい出来事が?起きてるのに??
やれ片思いがなんチャラとか?
やれ三角関係がうんチャラとか?
アホじゃないです?ん??(必死)
( ゚д゚)、ケッ
何が手を繋いだですか
何がデートをしたですか
何が……何が…………っ!
全っぜん羨ましくなんてないですからねッ!(迫真)
はあぁぁぁぁ(超溜息)
すうぅぅぅぅ(超深呼吸)
( >д<)、;'.・ ゲホッゴホッ
…………
……あぁ
……主人公みたいに
……なりたかったなぁ(瀕死)
『愛があれば何でもできる?』 135
「当たり前だ。
そんなくだらない事を聞くんじゃない」
「……じゃあなに?
学校で虐められてたあの子。
パワハラで自殺をしたあの人。
強盗に殺されたあの家族。
戦争で亡くなった大勢の人……!
……みんな愛があったら救えたとでも言うの?」
「愛が足りないからそんな事になるんだ。
馬鹿馬鹿しい」
「あの子の虐めを知った親は泣いていたわ!
あの人の自殺で自分を責めた家族がいたわ!
一家が殺されて義憤に燃えた国民がいたわ!
大勢の人が亡くなって戦争を凶弾した人達が沢山いたわ……っ!
この人達が利己的な理由だけで動いたとでも?
そんな筈はない、この人達の行動は愛があってのものよ!」
「誰も愛が無かったとは言ってない、足りなかったと言ったんだ。
例えば欲しい装飾品があったとしよう。だがどれだけそれを欲しても、金が足りなければ買えないだろう?
車はどうだ?
家は?
会社は?
……金があっても少額ならば意味は無い、大きな買い物にはそれに見合った大金が必要なのだよ。
愛もそれと同じなだけだ。大きな事をなす為には、それに見合うだけの沢山の愛が必要なのだ。
……猿でも分かる当たり前の話だろう?」
「……さっきから貴方の発言には、何の愛も感じられないけれど?」
「それも当たり前だ。
虐めなんていう小さな事ですら止められない、お前達と同じ愛の乏しい人間の一人だからな」
『子供のままで』
子供のままでいたいけど
子供のままではいられない
大人になりたくないけれど
大人にならなきゃ生きられない
だから私は憧れる
子供に対して夢を見る
アルジャーノンにチャーリィを
ネバーランドにピーターパンを
あれらは正しく英雄譚で
私は彼らに夢を見たのだ
※不快に感じる表現がございます、予めご了承ください。
『愛を叫ぶ。』
「……○○さん、気を確かにね。
しっかりと休むのよ」
「……えぇ、ありがとうございます。
また明日よろしくお願いします」
──ガラガラ ガチャッ
通夜が終わり、最後の客人であった義母が帰って行った。保険屋も、葬儀屋も、親戚も、親も……みんな帰って行った。
がらんどうとした仏間に残ったのは、俺とお前の二人だけ。
棺で眠るお前の顔を覗き込む。
とても死んでいるとは思えない程、安らかな顔をして眠っていた。
「お前がこれを聞いたら『ありがちな言葉だね』……なんて言って、俺の事を笑いそうだな」
明日になれば内々だけで葬儀が行われ、恐らくそのまま火葬場まで運ばれるのだろう。
……そうして俺だけが残される。
俺だけがここに取り残される……っ!
俺だけ……が…………ッ!!
棺にしがみつく
「う゛ぅ……うぁぁぁぁあ゛あ゛!!」
獣のような野太い声が響く
「あ゛あぁぁ……ッ!!
なんでっ!?」
愛していたのだ
「どうじてっ……!?」
お前を愛していたのだ
「なんで置いていぐんだよぉッッ!!」
今更どれだけ叫んだところで
「──ッッ!────ッッ!!」
もうお前には届かないというのに