観測者

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6/5/2024, 3:32:03 PM

誰にも言えない秘密

独りの夜は、時々涙を流してしまう。
掃き溜めに溜まった不安と不満を洗い流すために。
あなたがいてくれさえしたら、こんなことを考える必要もないのだけれど。いないものは仕方ないかな。会いたいな。
この寂しさは寝て起きればいなくなっているから、人に見せることはできない。だから今日も独りで泣く。
頬を伝う涙は、なんだか甘酸っぱい味がした。

5/31/2024, 9:10:17 AM

終わりなき旅

朝日にふと目を覚ました。濃霧が景色を包みこんでいる。なぜここにいるのだろうか。
横を見ると、青年がもそもそとお肉を口にしている。どこか浮かない顔をしているようだ。
青年が誰なのか知る由もないが、彼を見ていると未練の念が湧き上がってくる。それが何なのかは知らない。
しばらくして青年は立ち上がり、近くに落ちている骸骨を撫でた。それからこの場所を出発したが、後ろ髪を引かれている様子だった。
そんな彼を追いかけた。霧に飲みこまれてしまう前に。
こうして、透明な僕は旅に出た。

5/29/2024, 12:07:30 PM

「ごめんね」

おもちゃかさなくて、ごめんね。
たたいちゃって、ごめんね。
かってにクレヨンもってって、ごめんね。
あんなこと言っちゃって、ごめんね。
ウソついてべつの子とあそんで、ごめんね。
ヘンな子と仲よくしちゃって、ごめんね。
自分のせいでころばせちゃって、ごめんね。
好きな人を本人にバラしちゃって、ごめんね。
背伸びしたせいでめいわくかけて、ごめんね。
好きだからっていじわるしちゃって、ごめんね。
テストであの子に負けて、ごめんね。
勝手な行動して、ごめんね。
入試に落ちて、ごめんね。
学年1位取れなくて、ごめんね。
期待に応えられなくて、ごめんね。
失望させて、ごめんね。
こんなに手をかけてもらっているのに、ごめんね。
ご飯残しちゃってごめんね。
逃げようとしてごめんね。
泣いてごめんね。
入試に落ちてごめんね。
人生壊してごめんね。
逃げてごめんね。
ごめんね.

5/28/2024, 2:49:01 PM

半袖

今日も私はのそのそと起床。学校に行く用意しないとね。
まずはパジャマを脱ぎ捨てて、爽やかな夏服に袖を通す。
階段をパタパタ駆け下りてリビングに出たら、朝食を詰めこんで洗面所へ。
顔を洗って、歯を磨いて、髪をまとめて。
仕上げに真っ白な日焼け止めを満遍なく広げる。うん、バッチリ!
お昼の焼きそばパンをスクバに放りこんで、スマホを携えたら準備完了。
「行ってきまーす!」
鮮やかな空色をたたえる、すっかり夏の顔をした青空。
ジリジリジリジリ、シャアシャアシャアシャア……とけたたましく聞こえてくるセミの鳴き声。
額に汗を光らせて、今日も青春を謳歌する。

5/26/2024, 3:57:26 PM

月に願いを

夜の涼しさが身に沁みる季節、そよ風のなか月明かりに照らされる。
君もこの月を眺めているのかな。そうだったらいいのにね。
君はどこにいるのかな。雲に隠れてはいないかい?
月が僕らを繋いでくれる。会えない君を、少しだけ。
また会う日、君は僕を喜んでくれるのかな。
君は君、僕は僕。再びお互いの道が交わることは、きっとないだろう。
それでも、僕は君を恋焦がれる。また会いたいと月に願う。
月が滲み、スパークリングワインが喉を鳴らした。

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