観測者

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5/8/2025, 12:47:00 PM

届かない……

愛しの櫻木先生はどこにいるだろうか。
今日は会議の類も無いはずだけど、どこに行っちゃったんだろう。
先生のスケジュールは完璧に把握していますから、学校では最大限先生と過ごせるんですよ。
それが、今日は帰りのホームルームが異常に長引いてしまって、いつもの時間に先生の元へ行けなかった。球技大会の話とかどうでもいいから、早く終わってほしかったのに。
この時間は大概この部屋にいるのに、どこに行ってしまったの。悔しいけど、他の先生に聞いてみましょう。
「櫻木先生なら、カースの討伐に向かったよ。ごめんだけど、用があるなら終わるまで待っててほしいな」
なるほど、合点がいった。カースは私たちの生活を脅かす怪物。学校近くに出現したら、先生達は無視ができないもんね。
現場に向かおうとしたら止められるに決まってるから、なんとかして自分で居場所を突き止めないとね!
多分近くにいると思うんだけど………………


見つけた。
討伐は順調に進んでるっぽい。私も大人になったら、ああやってカースを討伐するようになるのかな……?
それにしても、あのでかいカース邪魔だなぁ。早くどいてくれないと、先生を見られないでしょ!
……って、え?
先生、カースに後ろを取られてるよね?大丈夫なの!?
先生は気づいてるんだよね?大丈夫なんだよね?別に……いいんだよね?
いや、まって。やっぱりだめだ。先生は後ろのカースに気づいてない。早く、早く何か言わないと……。
少しの逡巡がまずかった。
「せ、先生っ……」
先生は振り向いてくれた。しかし遅かった。カースに気づいた先生が逃げようと1歩踏み出したところで、先生の頭は飲み込まれてしまった。
先生の身体がどんどんカースに取り込まれてしまう過程は恐ろしいもので、しかし最後まで目をそらすことが出来なかった。

5/6/2025, 10:49:06 AM

ラブソング

どんなに出来のいいラブソングがあろうと、私にはきっと響かない。
世間一般の恋愛と私の恋愛は違うのだと信じてやまないから、大抵のラブソングはどうしても嘲った目で見たくなる。
でも曲の雰囲気は好きだよ、なんてちょっと気障なこと言ってみたりして。
誰か、私の愛を曲として描いてくれはしないだろうか。

4/20/2025, 10:14:28 AM

星明かり

都会の空にも星は光っているようだ。
しかし、輝きの弱い星は都会の眩しい灯りにかき消されてしまう。薄汚い紺色の空には、辛うじてオリオン座が見える程度だ。
都会にきらめく私も、そんな輝きの弱い星々のひとつでしかない。

12/7/2024, 1:17:17 PM

部屋の片隅で

早起きした日の午後はリビングの床に寝っ転がる。ぼーっとスマホを見て、生きているのか死んでいるのかよく分からない時間を過ごす。何の生産性もない素敵な時間だね。

12/2/2024, 11:55:04 AM

光と闇の狭間で

溢れんばかりの愛が君をそっと照らす。
灯りを差しだす私の裏はきっと見えない。
魔物が潜む私の裏は、常に灯りが覆い隠している。
渇いている私は魔物を駆逐できない。到底善人にはなれない器を持っている。
魔物はいつまで経っても闇になりきれない。到底悪人にはなれない根っこが張り巡らされている。
灯りが覆い隠す真実を、いつまでも照らされないように。

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