秋茜

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12/31/2025, 2:56:42 PM

良いお年を

一ヶ月ほど書いていませんでしたが、このアプリのおかげで創作の趣味が増えました。楽しい一年を過ごせて、感謝です。
来年も、良い年になりますように。

12/2/2025, 8:07:13 AM

夜の見せた夢

誰も彼も駆け足で 何も見ちゃいない
スマホが歩いてる 人間はどこだ
「できないの」「そんなことも」
常識が人を狂わせているんだ

オンリーワンなんて言葉は
どうやら忘れ去られたらしい
ああ 少し生きづらいな
ああ 少し休みたいな

夜から抜け出せない僕でも
君が隣で笑っていてくれるなら
そのまま凍てつく星空の下で
開けない夜に肩を預けてしまおう
例えそれが 夜の見せた夢だとしても

とにもかくも薄っぺらで 何も残さない
言葉が歩いてる 責任はどこだ
「多様性」 「ひとそれぞれ」
解るかよ 他人(ひと)の心なんてさ

「自分らしく」なんて言葉も
そろそろ飽きられたらしい
ああ 少し生きづらいな
ああ 少し眠りたいな

夜から抜け出せない僕でも
君が変わらず笑っていてくれるなら
そのまま凍てつく星空の下で
開けない夜に肩を預けてしまおう
例えそれが 夜の見せた夢だとしても

足りないのは 欲しがるから
欲しがるのは 夢を見るから
それより空(から)の体一つで
少し歩くのも悪くないだろう

夜から抜け出せない僕でも
君が隣で笑っていてくれるなら
そのまま凍てつく星空の下で
開けない夜に肩を預けてしまおう
例えそれが 夜の見せた夢だとしても

例えそれが 夜の見せた夢だったとしても

12/1/2025, 2:36:14 AM

「花雨」

霜降る朝の日差しに
目を覚ませば まだ
窓辺に残る夢の匂い

心の深呼吸をして
空泳ぐ 雲間を歩む
また私の今日は 時を進める

失われた響きを探して
あの坂を上れば
出会ったあの日と同じ
静けさが座っていた

君と紡ぐ物語
どうか忘れてしまわないで
からめとられ立ちすくんだ今日の日も
それさえ明日の糧にして
私と続く物語
面影は花の影に隠れ
雨帽子を被る亡霊に
この人生を届けるその日まで
生きて、生きて、生きよう。

11/26/2025, 5:26:22 PM

お題
・君が隠した鍵

「ねぇ。 幸せってどんな形してると思う?」

車椅子を押す僕に、唐突に君が尋ねた。

「うーん……形って言われてもなぁ……君は、どう思う?」

僕は、答えに窮して、おうむ返しに質問を投げ返す。

「……内緒」
「ええ? なんだよ、それ」

夕暮れに染まる、住み慣れた町並みを背景にして二人は歩いていった。
子供の頃から親しんだ川沿いの道を歩きながら交わしたその他愛もない会話が――ユキとの最後の会話になった。

・手放した時間

「もう、五年になるのか――早いな、本当に」
僕は、ふと目に止まったカレンダーの日付を見て思い返す。
あと一週間で、ユキの命日だ。
僕の心に、ユキのいたずらな笑顔と――あの日に交わした会話が聴こえてくる。

「幸せの形、か」

僕は、まだその答えを見つけられていなかった。
そして、あの日ユキが言おうとしていた答えも、まだ分からないままになっていた。

・落ち葉の道

僕は、何の気なしに出掛け、ふらふらと当てもなく歩き続けて……。
気が付くと、あの日に歩いた川沿いの道に来ていた。

ここも、あの時と変わらない――。
そう、言いかけて顔を上げ、ふと気が付く。

あの時とは季節が変わり、道は鮮やかな秋の落ち葉で彩られていることに。
ここから見える町並みが、少しずつ変わっていっている事に。

目を伏せて歩き、ただ生きてきたこの五年間で、初めて時の流れを直視した瞬間だった。

『ねぇ。 幸せってどんな形してると思う?』

あの日のユキの声が、再び僕に問いかける。
あなたの想い描く――答えを見つけられた? と。

・時を繋ぐ糸

「そっか、君は……見つけてたんだね」

僕はユキが、あんなに若くして理不尽な運命に流されるまま旅立つことになり。
どんなに悔しかったか。
どんなにか、悲しかったかと。
ただ、そんな想像しかして来なかった。

でも、そうじゃなかったんだ。

あの最後の川沿いの散歩をした二人の時間。
あの時ユキが見ていたのは、悲しい運命でも過去の後悔でもなく――。
こんな風に、移ろう季節を。
こんな風に、未来に向かい変わって行く町並みを。
ユキは、しっかりと見据えていたんだろう。

「ああ――そうか」

あの時ユキは、ただ「今」を見て生きていたんだ。
「幸せだった」んだ、と。
ようやく、僕は気が付いた。

ユキは、残された砂時計を目一杯使って、自分なりの答えをとっくに見つけていたんだ、と。

幸せの形。
僕の、幸せの形は――。

『あなたなら、もう大丈夫。 自分の人生を生きて』

ユキの声が、確かに聴こえた。
思わず振り返りかけた僕に、冷たい木枯らしが吹き付ける。
振り返らずに前にすすんで、とでも言うかのように。

僕は、あの時とは変わってしまった今を。
しかし、確かに時を超えて繋がっている今を顔を上げて生きて行く、と。
そう、心の中で思いながら、再び歩き始めた。

ユキが見ていた幸せの形に思いを馳せながら。
自分が見つけた幸せの形を見つめながら。

11/23/2025, 10:04:54 AM

紅の記憶~紅乃神子と蒼白艷戸の未解決怪事件録~

:プロローグ

――紅 乃神子。
黒髪ショート、身長150丁度。年齢二五才。
見た目こそ地味なごく普通の一般人女性だが、
彼女の職業は少し――いや、大分特殊なものだ。
人に言えない職業、とだけ言うと語弊があるかも知れない。
正確に表現するなら、
『言ったところで理解されない』と言ったところか。

その件の彼女――乃神子は、狭い3LDKのマンションの一室で現在、絶賛『格闘中』だった。

「――蒼白艷戸。 おい、聴こえているか? 起きろ、こら。……あーおーしーろーあーでーとー!」

事務所兼自宅のリビングの床にだらしなく仰向けになり、
死体のように四肢を投げ出し、転がっている助手の女の身体を、乃神子は面倒臭そうに足で小突いて起こそうと試みる。

「うーん……。 うん? あ、のみこさんじゃあーないですかぁ~。 おはよぅ……すやすやー……」

まるで夏場に放置して溶けたアイスみたいな腑抜け声で返事を返し……ている最中にまたシャットダウンする――蒼白 艷戸。

このやり取りをかれこれ三十分はリピートしている。
「今日は特別、厄介な案件が舞い込んで来てるっていうのに……全く」

――このままでは、仕事を始められない。
乃神子は、強行手段に出ることにした。

「……話半分もいかずに寝るな、このたわけがっ――! いい加減に起きろ!!」

「!? ア――っ!?痛あぁい!!?」

再び夢の中に入りかけた艷戸のみぞおちに――乃神子のサッカーボールキックが鈍い音を立てて刺さった。

「な、なにをするだあー! 私が“人間だった頃“なら全治一ヶ月は適当な威力でしたよ!?」
艷戸が飛び起きて、抗議の声を上げる。

「“人間だった頃“ならな。 じゃなきゃ本気で蹴り飛ばして起こしたりしとらんわ」

乃神子があきれ顔でため息をつく。

その言葉の通り、乃神子は寝ているとこに実際『本気で』蹴りを入れていたわけだが
――艷戸は、騒ぎたてている割にはさっぱりダメージは無いようだ。

そう、何を隠そう、冗談ではなく彼女は人間ではない。
――乃神子の使役する“僵屍“なのだ。

「ひどい! 流行りの“パラパラ“上司だぁ!?」

「“パワハラ“な? あと、どっちも流行りは大分過ぎてるぞ。 どうでもいいから座れ」

地団駄を踏みわめきたてる艷戸の天然ボケを涼しい真顔で受け流し、乃神子は部屋の奥にある事務椅子に腰を下ろして脚を組む。

「とりあえず艷戸――仕事の時間だ」

そう言うと、乃神子は鞄の中から資料の入った封筒とファイルをどさりと机の上に投げ置く。
ぱっと見ただけで――合わせて、A4五、六十枚はある資料の山だった。

「ひええ~……なんか、面倒臭そうですよー。……この依頼、断りません?」

うんざり、といった様子を隠さず文句を言って、艷戸がため息をつく。

「断る。 お前の提案はな。 依頼は既に受諾済みだ、残念だったな。 働け」

「そんなあ」

ぶつぶつと何やら文句を呟きながらも、諦めて艷戸は封筒の封を切り、仕事に取りかかる。
その傍ら、乃神子もファイルをめくり、内容を整理していく。

――ニュースには報道されない、未解決事件。
その中には――明らかに『この世ならざるもの』によるとしか言えない事件も数多に存在しているのだ。

『論より証拠』とは良く言われるが、こうした事件では当然、証拠などでない。

そんな、科学の世の中では手に余る『“怪“コールドケース』を解決するため秘密裏に結成された――現在、日本に三ケ所だけ存在する専門機関。
『特殊緊急“霊的事案“調査解決機関』。
通称――『特霊』

この物語は、その『特霊』東京支部にて働く二人――霊媒師の紅 乃神子とその助手兼“僵屍“蒼白 艷戸の、事件記録の一端である。

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この話はプロローグまでで…。〆

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