今日にさよなら、昨日にさよなら。毎日毎日、その日の自分に別れを告げて次へ進んでいく。
次の日目覚めた自分は、また新しい自分になっている。でもそれは、今までの自分の全てを引き継いで、できあがっている自分。
だから、完全にリセットされた訳じゃない。そして、今の私もまた、明日の私に繋がっていく。毎日毎日、大切な役割を担っている。
私のお気に入り。音楽を聴く時間、絵を描く時間。芸術は私の心を癒してくれる。
細野晴臣の音楽を聴きながら絵を描く。大滝詠一の音楽を聴きながら空を見てみる。はっぴいえんどの曲を聴きながら、目を閉じてみる。
心がまっさらになって、暖かい気持ちになる。
十年後、私は二十六歳になっている。高校どころか大学すらも卒業し、社会人として生きていかなければならない年齢だ。
…たまに考えてみるのだが、私は、十年後ふと、今の生活を思い出して、どんな気持ちになるのだろうか。「あの頃に戻りたい」?それとも「あの頃にはもう戻りたくない」?
今の私は、十年前になんて戻りたくない。それは、今の私が大好きだから。今の私に満足しているから。…もちろん、まだまだ伸び代はたっぷりあるし、もっともっと自分を成長させていきたいという気持ちもある。
愚かで、純粋で、無垢で、一日、一月、一年が無限にあるように感じられた、あの頃。家が、学校が、近所の公園が、世界の全てだと本気で信じていたあの頃。
今よりも、一緒に遊ぶ友達は多かった。でも、今は一人でいてもずっと楽しい。今よりも、ゲームが大好きだった。でも、今は音楽を聴いている方がずっと楽しい。
人は変わっていく。一ヶ月、いや、一週間ですら変わってしまう。十年後。今の私はもはや、存在しないのかもしれない。でも、確かに、十年後の私の中には、今の私が生き続けているはずだ。
今の私にとっては何気ないことでも、十年後の私にとっては、かけがえのないものになっているのかもしれない。それは、まだ誰にも分からない。
どこにも書けないこと。誰にも言えないこと。きっと誰にだってあるはず。過去にやってしまったこと、消し去りたい記憶のこと、自分だけが抱きしめておきたいこと。それは十人十色。
それは、その人をその人たらしめている、とても大きなものなんだと思う。秘め事。隠し事。宝物。黒歴史。いろんな言い方があるけど、それもまた人それぞれ。
自分の中にとどめようとして、内側から傷つけられている人。言えない自分に絶望している人、心の中からそっと取り出して眺めている人。いろんな人がいるはず。
自分は、どうなりたい?
君と同じ空間を共有している。
まるで時が止まったかのように。ひたすら。
君とずっとこの場所で、同じ空気を吸い続けたかった。
君が吐いた言葉を飲み込んでは咀嚼し、伝わってきた空気をまた伝わせて返す。
そうして、君との間に見えない道ができる。
…「じゃ」
そう呟き、君は別の世界へと消える。
ああ、また、この空間に一人きりだ。
せっかく築き上げた道は途切れ、私の中に、
君の言葉だけが溶け残る。
ふと、時計を見上げた。
…なんだ。止まってなんかいないじゃないか。
お前のせいだぞ。私が一人になってしまったのは。
そんな言葉が、また響く。
受け取り手はいない。ただ空気が揺らぐばかりだった。
時計の針は、静かに時を刻む。