君と出会ったのは小さな画面の中の果てしなく大きな世界だった。奇跡だと思う。数え切れないくらいの人の中から2人が出会ったのだから、奇跡なのだ。その世界の中で私たちは恋に落ちた、顔も、ほんとうの素性も知らないままに。
危険なのは頭では理解していて、盲目な目で彼の影を探した。影を見つけてもなお、想いは加速するばかりで困惑する。いつか会おうと言う彼の言葉はあまり嬉しくは無かった。それは何故だったのだろう、
外見が好みじゃないと言われた時のことを心配していた?
それとも
急なことで喜びよりも驚きが勝ったのだろうか
それとも、
この恋のような感情は所詮、儚い夢のようなおままごとだったのか…
真実は知らないままでいい。今はまだ、この生ぬるさが心地よくて、抜け出せることを知っていても理性は効かない。いつまでこうしているのかなんて考える気もない。
しばらくは、このままで
ススキをすぅっと通り抜け消えるようにして 居なくなったあなた
かつての当たり前の日常の懐かしさ
秋の木の葉を風にまとわせ
冬のかおりを漂わせる
しんと静まり返った空はうすく張り詰めた氷のように危うい均衡を保っている
肌寒く人肌こいしくなるあなたからのお便りは
ひとときの未読のままに
私は日常の喧騒に呑まれ、壊れてしまったようだ。
ありふれた幸せももはや感じられない。 山のように
あった趣味も淡く儚い恋心もいつしか壁の向こう側
へ消え去ってしまった。壁の向こうには本当の私がいる、何の憂いもなくただ生きることを楽しんでいた
幼い私、透明な自分。いつからだろう、自分を見失ってしまったのは。
「壁を超えればいいじゃない」
壁の向こうから幼い自分のこえが聞こえる
ーそれが出来ればとうにしてるよー
「全ての可能性はあなたが握りしめているんだよ」
まただ
ーでもこの壁は果てしない、上も左右も限りないしこの世界はうす暗くてどうにかなってしまいそうなのー
「越えるじゃない、超えるのよ」
意味が分からない 見てもないのに感じの違いなんて
分からないし 現実を知らないあなたに何がわかる?
「現実はここでは関係ないわ 想像して あなたは子供だと、、 なにがしたい?」
気がつくと私は騒がしい現実を忘れていた。夢を諦めかけ、これでは駄目だと分かっているのに努力を怠る。そんな自分が嫌だった。そっか 私は私を大切に出来ていなかったんだ、思うように行かない生活に嫌気がさしていた。どうすることもなく見て見ぬふりをするうちに張り詰めた糸が切れる。私は一体どうしたいのだろう 子供のように真っ白に考えてみる。
懐かしいあのころに、幼い頃のように、純粋に夢を追い求めていた透明なあなたに、もういちど、、!
「それが答えだよ笑 全ての可能性はあなたが握っている。 もう大丈夫、壁はあって ないようなもの」
私は目の前に聳える壁に向かって重い足を踏み出した。ぶつかるのは怖かったけれどなぜか足は前進を
止めない。思わず目を瞑ったとき、ふわっと優しい居心地の良さに身体が包まれた。目を開けた時、そこには誰もいなくて ただいつも通り何も変わらない日常が広がっていた。しかし、いつもより透明な自分とと背中に背負った懐かしい夢が 秋の肌寒い風を暖かく染め上げていた。
私にはすきなひとがいる。でもその密かな片思いが叶うことはない。相手は既婚者の学校の先生、
微塵にも可能性なんてないんだよ
わかってる、
分かってるのに気持ちは溢れて止まないの
だれも知らない努力を認めてくれたとき、休み時間一人でいるわたしに話しかけてくれるとき、ふと、からかわれたとき。どんな時でもすきで、すきで、、
誰も知らないこの思い。ばれているだろうか
そもそも すき、というこの気持ちは本物?
叶わない恋をした悲劇のヒロインになって楽しんでるだけ? でも、それだけならこんなに目で追わないし、欠点を見てもずっとすきになれないし、明日が少し楽しみになんてならない。
これは恋なんだ
はかなく散るものだとしても、それも大事な思い出で。
わたしだけは、この恋を大切にする
つぎの物語をはじめるまでは
わたしは今、死んだのだろうか。自分の生きる希望を失い、でも痛いのは嫌 何て考えていたらここへたどり着いていた、 ここは真っ白な世界。
生き物の暖かさも冷酷さも感じない、
ただ
花畑がどこまでもひろがっていた
居心地がよかった。帰りたくない、と思う自分をすこし怖いと思う そういえば、何でここへ?
わたしの影は薄くなっていく、戻らなきゃ
どこへ?
たいせつなばしょ
たいせつなひと
何一つ残っていないのに