私は日常の喧騒に呑まれ、壊れてしまったようだ。
ありふれた幸せももはや感じられない。 山のように
あった趣味も淡く儚い恋心もいつしか壁の向こう側
へ消え去ってしまった。壁の向こうには本当の私がいる、何の憂いもなくただ生きることを楽しんでいた
幼い私、透明な自分。いつからだろう、自分を見失ってしまったのは。
「壁を超えればいいじゃない」
壁の向こうから幼い自分のこえが聞こえる
ーそれが出来ればとうにしてるよー
「全ての可能性はあなたが握りしめているんだよ」
まただ
ーでもこの壁は果てしない、上も左右も限りないしこの世界はうす暗くてどうにかなってしまいそうなのー
「越えるじゃない、超えるのよ」
意味が分からない 見てもないのに感じの違いなんて
分からないし 現実を知らないあなたに何がわかる?
「現実はここでは関係ないわ 想像して あなたは子供だと、、 なにがしたい?」
気がつくと私は騒がしい現実を忘れていた。夢を諦めかけ、これでは駄目だと分かっているのに努力を怠る。そんな自分が嫌だった。そっか 私は私を大切に出来ていなかったんだ、思うように行かない生活に嫌気がさしていた。どうすることもなく見て見ぬふりをするうちに張り詰めた糸が切れる。私は一体どうしたいのだろう 子供のように真っ白に考えてみる。
懐かしいあのころに、幼い頃のように、純粋に夢を追い求めていた透明なあなたに、もういちど、、!
「それが答えだよ笑 全ての可能性はあなたが握っている。 もう大丈夫、壁はあって ないようなもの」
私は目の前に聳える壁に向かって重い足を踏み出した。ぶつかるのは怖かったけれどなぜか足は前進を
止めない。思わず目を瞑ったとき、ふわっと優しい居心地の良さに身体が包まれた。目を開けた時、そこには誰もいなくて ただいつも通り何も変わらない日常が広がっていた。しかし、いつもより透明な自分とと背中に背負った懐かしい夢が 秋の肌寒い風を暖かく染め上げていた。
10/13/2023, 12:01:03 PM