いつものように、お地蔵さんに手を合わせる。
今日、怪我なく無事に過ごせました。ありがとうございます。
明日も健やかに過ごせませよう、見守ってください。
それを積み重ねていく。ただ、それだけでいい。
エイプリルフールに冗談を言い合うなんて、そんなウイットに富んだ会話なんてできそうにもないけど、
…やっぱり何も思いつかなかったよ。。
イルミネーションの人工的な灯りを見ると、自分ひとりなんだと思いこんでいた時期を想い出す。
あの頃は永すぎた片想いをやっと終わらせて、ああ、誰も好きな人はいないなぁ…と、自由になったような、寂しくなったような頃だった。
ひとりも悪くないよ。自分で決めて進んでいく道は、結局ひとりでしか行けないんだから。
まぁ、20年も片想いしていたのは、本当は誰も好きじゃなかったのかもしれないけど。
それでも、どこかで拘泥して、勝手に息苦しくなってた。
そこから自由になって、目を上げた先で光っていたのはイルミネーションで。
人工的な、誰かの努力でそこにある光は、君はひとりじゃないよと囁いているようだった。
唐突に逢うのはいつも夜で、グループで飲んでいるところに、一緒に飲もうよと誘われるのが、いつものパターンで。
こっちはひとりでポツンとしてるし、スマホ観ながら飲んでるし、で、寂しそうに見えるのかもしれないけど、いや、リラックスしてるだけなんだが。
同級生で、地元では自営業の娘で自己紹介もしやすいというか、個人情報ダダ漏れで。
わたしの声は通りが悪いから、飲み屋では特に顔を近づけないと、言ってることを聞き取ってもらえない。
「キスされるのかと思った」
「私にその発想がないの、知ってるでしょうに」
…そんなのしないよ。君を好きな気持ちは消えないけど、私にも大切な人がいるんだから。
自分にこんなシチュエーションを経験する瞬間が来るとは、君に好きだと言っては振ら続けた3年の間には想いもしなかったよ。
冬の夜は長く、雪が降る頃になればなおさら、空気が澄んでくっきりと浮かぶ月や星々が闇に輝く。
深い闇になればなるほど、ひとひらの光が眩しく感じる。
いろんな譬えができるけれど、それは全部飲み込んで、ただ、夜の静けさに浸っていたい。
朝の光の暖かさに頬が緩んだり、夜の寒さに肩をすくめたり。
両方あるから、それぞれに感謝してしまうのかもしれない。