#14 例えばそれが抹茶だとしても
溢れたアイスクリームには虫が集ってる。
あの日崩れた愛に似てる、
まだ純愛だった頃の私たちには誰も見向きもしなかったくせに
だんだん壊れていって普通を保てなくなった途端に寄ってたかって指差して笑った。一部の奴らは優しさに酔いしれて味方面の手を緩めない。虫を見るような目で見られてたのはこっちなのにさ、虫みたいに気持ち悪く群がったのはあんたらだったよ
けどここにある甘さだけは崩れても変わらないんだね
ムカつくわ
♯13 初夏までは面白味もない喜劇のままで
まだ蝉がうるさい夏の終わり。
このアパートの一室で私は1人だった。
こんな悲劇がやさしさなんて私は絶対に信じない
あいつは私の幸せを願ってた。
あんなに適当な態度だったのに?
2人で馬鹿にした愛って結局ここにあったの?
そういえば話を聞いてないようで
よく見てくれてたよね、めんどくさいみたいな顔してさ、
アルコールしか信じてませんって嘘じゃんか
あいつは私の幸せを願ってた?そんなの不可能だよ
あんたの幸せをこっちは願ってんだから
私を幸せにしたあんたがいくら自己満足で幸せでも
そんな幸せを私は認めない。
あ、そういえば自己満で人を幸せにできるような奴でもなかったな、じゃあこれはいっそ愛なの?
それでも、やさしさなんて愛の証明の片隅にも置けない。
だから自己満足ってことにしてよ。
そしたらあいつの本当の幸せを今度は願えるからさ
そのためなら私は不幸にだってなるよ、
だからこんなのが本当のやさしさだなんて信じない。
信じたくなかったんだよ。
これは、神様となんの変哲もない少年の話です。
昔、ある国のお城に不思議な目の色をしたお王子様がいました
肌は白く透き通っていて長いまつ毛に隠された目の色は神秘的でそんな王子様のことを国民は神様の愛し子だと言い、当時信仰されていた教えと並列して王子様を崇拝の対象としました。
しかし、王子様は日光に弱く皆の前に姿を現すことはもちろん、外に出ることも出来ず、暗いお城の一室で一人、
豪華絢爛なベットに蹲るような生活を送っていました。
一方的に教養と賞賛だけが注がれる王様は次第に部屋に戻るなり涙を流し朝には涙の跡を隠す、そんな習慣に溺れていきました。こんな窮屈な生活であれば無理もありません。彼は寝る前にぼやけた目でカーテンがかかった窓に目を向けます。もうずっと隠されたいままのステンドガラスに頬を当てまた涙を流して夜が明けないでと願いベットに戻って悪夢にうなされる、それでも翌朝には彼は笑顔でお城を訪れた人々に接しました。なんせ、彼はその国の王子様なのですから。訪れた国民はまた呪いの言葉を口にします。「”神様の愛し子”でもあろうお方とお会いできて光栄です。」と、王様は聞くたび頭の奥を刺す痛みに耐え笑います。笑います。笑えてます。
そんな苦しい日々の狭間でスクライブ、いわゆる伝令員からの知らせで30年ぶりに「曇り」という太陽が隠される日が1週間後に訪れることを知りました。30年ぶり、それは彼が生まれる13年前のことです。えぇ彼が生まれてから初めての曇りです
彼は生まれて初めて外に出れると思い廊下を早歩きで歩きお母様に聞きにいきましたが、「紫外線」というものの危険性をこんこんと説かれ部屋に戻されました。
頬に当てたスタンドガラスは夏でさえ冷たく心を鎮めてくれます。彼はふと歪んで見える星空に手を合わせて目を閉じました。もし本当に私が神様の愛し子であるならば外に出れる魔法をかけてください、と。お願いした後に魔法は変だったと考えましたが、言い換える間もなく彼は神様にこの1週間、善行を積む約束をしその日もベットに沈みました。
あとは1週間王室の人間でいるだけです。
あれから丁度7日、大量の雲がこの国を訪れた今日は、夜が完全に明けるよりもずっと前から風がステンドガラスを割れるほど叩きつけていました。こんなにも怖いものなのかと王子様は少し怖気付きましたが、王子様は孤独よりも怖いものはないと知っていました。さて、王子様は本当の愛し子なのかと好奇の目を向けるものはどこにもいません。王子様と神様だけの約束です。正直のところ王子様の心の3分の1は疑いで支配されていました。だからこそステンドガラスが勢いよく割れた時王様は
大きく息を飲みました。部屋のドアには昨夜鍵をかけました。
更には大きなグランドピアノでドアを塞ぎました。
どこにも王子様を邪魔するものはいません。
王子様は裸足のまま屋根を滑り落ちました。
生まれて初めてにしては強すぎる外の風は王子様を
純粋無垢な少年へと変える魔法をかけました。
月が見えなく風の強い夜、神様は彼に愛の証明をしました。
彼は神様に愛されていました。
彼はまた神様を愛し始めました。
翌朝、消えた王子様の話は国中に知れ渡りましたが、
彼の行方を知っているのもきっとまた神様だけなのでしょう。
12. 愛に入り浸る貪欲姫
私は賞賛の声が絶えない人気者になった。
確か半年前ベットについてからだったかな、
幸せに囲まれて愛に包まれて、そこから抜け出そうなんていう物好きはなかなかいないだろう。
ただ、さっき会った根暗な不細工だけが
「全部夢だよ、起きてよ」なんて言って私を皮肉ってる。
だから誰からも好かれるような笑顔のまま教えてあげた。
「どこも夢じゃないよ」って。
泣きそうなあの子はもっと不細工な顔して必死に
足元にしがみついてくる。汚いから蹴飛ばした。
「夢じゃないんだよ?あんたが醜いのも」
跳ね返って刺さった何かに気づかないふりして
空想の愛に浸っている。
歪んだ顔をしたあの子の額には半年前の私と同じ傷跡がある
首元には同じようなほくろがある。
けど今の私にはどっちもない。じゃあの子は、
けどこれは夢じゃないからどっちでもいい
11. 苦い愛が注がれた たかが小瓶
あなたは「またね」なんて言っていとも簡単にわたしを世界に取り残しました。あなたは私に小さな小瓶を残して私の世界からいなくなりました。もうどこにもいません。
秘密基地にも、空の上にも、海の中にも、どこにもいません。
最初の頃は一緒に行こうと何度も何度も私の手を引っ張った
くせしてそれを拒んだ私なんかはこんなにも
容易く見捨てられるんですね。
拒み続ける私への憎しみがこの小瓶ってわけですか?
私はこの際もうどうすることもできません。
それも全て知っていましたね?
こうしてここから三ヶ月も動けない私は予想通りですか?
あんなにも楽しかった日々を泣けるほど愛おしく思っていたのも私だけだと今更気付いた私は馬鹿なんですね。最初からずっと選択肢なんて一つなのに何に怯えてるんでしょうね。ずっと選択画面で固まったままの私は誰から見ても滑稽でしょうに。
さて、この瓶には蓋がある。
私はこの蓋を開けられずにいた。そして今、目の前には蛇がいて、「私が開けよう」と立ち塞がって動かない。正直のところ、あの時こそはこの世界に執着してたものの、この真っ暗闇な世界に私はさらさら執着なんかしてないのだ。きっと何かが怖いけど、あの時の日々を、あなたを失くした今の方がよっぽど怖くて足がすくんでるだけなのだ。私は蹲ったまま蛇に小瓶を差し出す。
やっと私はあなたに殺されようと思う。会いに行こうと思う。
そう思ってたのにさ。
私の視界には真っ白で無機質な天井が見据えてる。
そこまで言ったらわかるだろう。病室?いつから?
ただわたしの横には次は小瓶の代わりにスマホがある。
そこには生きてた頃のあなたが残した音声メモの羅列だけが続いてる。日付はそこから3年と少し、そうだった。
私が見てたのはあなたが死んで後を追った私の妄想だ。
わたしの全てだったあの世界での日々がこんな一言で終わってしまうのが虚しくて何も出来ない。
ただこの音声を聴いたら全部が終わる気がして。
あの日の「またね」を真っ白な嘘にする気がして。
ただ泣いている。小瓶はもうない。
あの小瓶が口苦い良薬なんかじゃなくて、毒薬だったら
また会えたのに。なんて小言も矛盾してる.
きっと今でも難なく会いにいくことなんてできるのに。
けどまた覚悟が決まるまでには時間がかかりそうなんだ.
これを聴いたらきっともっとかかるだろう。
それなのに、声があまりに甘く優しいから
どうか、またねってまた笑ってくれよ。