onion cryer 330

Open App
7/26/2025, 5:59:13 PM

5 涙の代換えにしては不透明


こんばんは。
殺したいほど憎い人はいますか?
例えば大切なものを取り上げた人とか
大切な人を殺した人とかさ。
うん、そうだね。あいつは、私のお母さんを殺した。
それも私の目の前で。

あの時お母さんはどんな顔してたっけ。
そういえばお母さんって元々どんな顔してたっけ。
ただあの時のあいつは変な顔してたよね。
あいつにお母さんが殺されたあの時だよ。
何度も何度も何度も何度もナイフが血に漬かって
私は見てることしか出来なかったあの日のことだよ。
あいつはあれから直ぐに逮捕された。
重すぎるくらいの実刑に笑うお母さんの声が聞こえる
私は大切な人を失った。居場所も取り上げられた。
全部⬛︎⬛︎⬛︎のせいだ。

私はあの時からこの部屋を出られない。
憎しみに泣いて震える手はキーボードを打って
コピー機はノンフィクションを吐き出す。
これは復讐だ。あいつがやったことこの目で見た全てを鮮明に打ち込んでは印刷してく。私なりの復讐。
どれだけ書いてもキーボードを打つ手は止まらなくて、
部屋はコピー用紙で埋もれてく。私は打ち続ける。
殺したいほど憎い人を殺せずにいるから。
私は打つ手を止めない。⬛︎⬛︎⬛︎が憎いから。いや、、、

もういいよ、そんなの。

ねぇ、本当は悲しかったんじゃない?
必死に床を隠したそれは復讐の跡なんかじゃなくて、
あの時から今まで、流せなかった涙の跡だったんじゃない?
だってあいつが私の傷を見つけて助けてくれた唯一の誰かだったんだから。きっと悲しかったんだよ。悲しかったんでしょ?
ほんとに。あいつが死ぬことないじゃん。悪役を倒したヒーローが断罪されるなんてこんな結末はあまりに悪趣味すぎる
私はあの日大切だったあいつと唯一の私の居場所を失くした。
殺したいほど憎い人、そんなのあの時からずっと自分だった。気付かないふりが楽だったのかな。あれから3年も経ったのに
結局、外に出られない私は救出劇には間に合わなかった。
ほら、見て、涙の跡が燃えてくよ。
これがあいつが望んだ救出劇だって言うならさ
こんなの最大の皮肉だよね。
あの日からいや、あいつと出会ったあの日から初めて私は泣いた。涙じゃ火は消えないから、本当の涙のあとはきっと私の目にしか残らないだろう。必死に涙を拭って跡をつける。
こんな子供だましにあいつが駆け寄ってくれたらよかった。
ふと、あいつと出会った時、泣きそうなほど嬉しかったことを
思い出した。

7/25/2025, 5:22:41 PM

4、仇を取るのを忘れてる ー 半袖 ー

私は彼を階段から突き落として殺す。そんな私の目論見は結局上手くいかず、意識を取り戻した彼は私の元へ平然な顔をして帰ってくる。ただ帰ってきた彼は彼であって彼じゃなかった。全てを忘れた彼は私の見た事のない困り顔で笑ってベットに座っていた。そんな彼に私は彼の唯一の味方だと言って聞かせた。彼は私の手を取って涙を浮かべてありがとうと笑う。
罪悪感などひとつもない。恋人に寄り添う健気な彼女として私は窓際にヒヤシンズ飾る。そんな話がもう半年も前のことだ。
あれから私はずっと、昔話なんて言う名目の理想を彼に注いでいる。今や彼の頭の中は私が教えたことが全てで彼の人物像だって私が造り上げた通りになった。いつか本で見た思考実験に似てると思うと恐ろしいが、背徳感に似た何かが私の手を緩めさせてくれない。えぇ、はい。いつも優しくて明るくて怒ってるところなんて見たこともありません。植物と読書が好きで、落ち着いた大人の余裕がある人というかそんな感じでしたね。
なんて具合に。
そして今日が私の誕生日だと言うのも私は抜かりなく伝えていた。想定通り私が彼に話した『プレゼントをよくしてくれた優しい人』なんて言う設定を懇切丁寧になぞってプレゼントを買ってきた彼の手にはブランドの紙袋が握られていて、中には私が好きなヒヤシンス色の夏服が何着か入っていた。けど、いざ広げてみるも半袖ばかりの服達に笑ってしまう。きっと前の彼ならプレゼントはもちろん半袖の洋服なんて絶対に買い与えないだろう。“なんせそれは指名手配犯がポスターを持って外に出るようなものなのだから“
試しに腕の痛々しい痣を見せてみる。彼は一瞬、顔を歪ませて優しい声で誰にされたの?って聞いてくる。さて、彼は私を守るといった。

けど生憎もうここには怪物もいない。
怪物は今や勇者になってしまったのだから。
きっと世界は平和だろう。

ただ怪物のあなたに会いたいと思ってしまう守られたはずの私はこれからも善良な市民をやって行ける自信が無い。

7/24/2025, 3:42:37 PM

3. たかが石すら投げられない 愚か者にすらなりきれない



“本当は醜くて汚いくせに必死に取り繕う愚かな貴方には
ある昔話をしてあげましょう“

これは、ここよりずっと遠いお国のお話だ。
その当時ある重大な罪を犯した女は
善良な市民らによってイエス様の元に連れられた。
彼らは口々に言うこの女を罰してくださいと。
野次が飛び交う。声量は増してく。なのにイエス様が口を開くだけで波のように静まりかえる。簡単な人達だ。
そして、イエス様は静かに言った
「もしこの中で自分の人生において罪を犯したことがないと言うものは彼女に石を投げなさい」と。静かに響いたイエス様の声はきっと、市民ら全員の耳にちゃんと届いてたはずだ。
それなのに彼らの足元に転がった石は微かに揺れるだけ、
彼女に投げられる事はなかった。
そう、誰も投げなかった。正しくは投げられなかった。
人間誰しも罪を犯している。
人を断罪する権利など、さらさらないのだ。
もし彼女を断罪できる人がいるとするのなら
それは言わずもがな、ただ1人なのだろう。
と、ここまでが教訓。

けど、もし、例えば私がこの昔話にいたのなら私は彼女に喜んで石を投げつけよう。もう罪を犯しているのなら、ここでの嘘もまたこれまでと変わらないのだから。
ただでさえレッテルが消えないのだから事実は尚更。
そしてきっと愚かな者はまた愚行を繰り返す。
それをきっと影で笑いながら避難するのが貴方なのだろう?
その言葉を聞いて愚行を繰り返すのがきっと何も持ってない私なのだろう。ただ幸いなことにこの昔話に貴方は居ない。
そしてまた私という有り体ばかり気にした嫌な奴もいない
もし、過去に戻れるのなら?それがはるか昔でもいいのなら。
当時そこにいた誰かとして笑って石を投げつけよう。顔が潰れるまで何度も何度も、イエス様にやらされたとでも言おうか。

けど残念なことにここは昔でもなんでもない。いくら昔に貴方が居ようが居まいが関係ないくらい今でしかない。
目の前では愛嬌で成り上がったヒロインが演説を繰り返している。かつては人を虐げ笑う醜い女のくせに。
演説も終盤、隣の人が手を叩き賞賛の声をあげる。
その賞賛は波紋を広げて会場が熱量で湧く。
さて、足元には石がある。中くらいの石だ。人に投げるにはうってつけだろう。そんな石が私の足元を転がっている。のに
おかしいな。私は拍手をしている。私は賞賛の声を送っている
結局はそういうことか。

7/23/2025, 1:40:54 PM

2. 飛んで火に入る夢想家は、飛んで彼追う矛盾家と



▼ You've been searching for a long time
君はずっと探してる。

▼ It's something that doesn't exist in this world
この世界に無いものを。

▼ How long will you search for?
いつまでそうしてるつもりなんだい?



“この世界には本当の愛というものはさらさらない”

とある変わった科学者が思考実験を繰り返して証明した稀代の発見だ。それまではあたかもそこに本当の愛があるかのように命が生まれ命が奪われた。人々は確かに愛を求めていたが求める一方だった。愛を求めた故に生まれた「建前の愛」は払拭されて、いまや、恋人の存在意義はステータスと定義された。
より可愛い子と付き合うことによって見込まれたハロー効果。
より賢い子、より穏やかな子、より面白い子、という具合だ。
それこそ結婚をするという事実だってそれを満たすのだから。
建前に騙されて結婚できない者はおおいに救われたことだろう。運命をわざわざ求めることの不必要性をこぞって証明してくれたものだから。夫婦喧嘩も離婚もこの世界では減少傾向にある。それもこれも最初の仮説を出した王様のおかげだ。
愛がいかに幻想でそれを求めるのがいかに愚かで滑稽か
今や全国民が常識として知っている。
だからこのゲームの攻略こそ不可能だ。昔のインディーズゲームなんて愚かで極まりない。プレイヤーに愛を探させるなんて
あまりに屈辱的で可哀想だ。
ということでこのゲームの販売は禁止されたはずだ。
そして今あるデータは国際的な技術導入によって書き換えられた。だから何度も言うようだがこのゲームの攻略は不可能だ。
例えどれだけ攻略法を覚えていようと、だってそれは



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

▼not found 404
そのようなデータはありません


▼ What you're looking for isn't here
あなたが探しているものはここにはありません


▼ If you still want to find true love, die by your own hand
そんなに愛が欲しいのなら今その身をここから投げ出しなさい


▼ There is certainly something lost there
そこならきっと探し物が見つかるでしょう


▼〆+*÷2>*€#〒:6€÷\3¥〆+♪÷$〆々¥〆÷€〆=+€#
そknあrあ きっと @なttaw ╪ ╪ ╪ ╪ ╪ でしょう



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈error┈┈

7/22/2025, 1:28:28 PM

1. 所詮、朝焼けを這う毒蛇だ

これは、愛の話だ。紛れもなく本当に。だってそこに愛があったから。それは誰がなんて言おうと愛の話だ。
ただ愛の話がハッピーエンドなんて言う決まり事がある訳でも無いから私は早々にして彼の部屋で人生を終えた。
人類の中でも美しい死に様だっただろう。
朝日が覗いたまだ薄暗い寝室で、彼が「またいつか」と泣きそうな顔をしていたのだけは鮮明に覚えている。
「またいつか。」
なんて言って震える手で注射の針を進めてく。
懇切丁寧にベットに寝かせられて殺される私は反抗もサラサラする気がない。だってこれは愛なんだってこの柔らかい手つきに触れた私だけが知っている。注射針のそれは毒であって毒じゃない。愛。愛だよ。けど、悲しいのも事実だ
彼と私の涙がぐちゃぐちゃになって私の視界はぼやけてく。
彼の嗚咽が響く響いてたのにそれは次第に笑い声に変わって、私を抱きしめた。彼に抱きしめられたのは初めてだった。最初で最後、そんなのも私の意識があるうちの話なんだろうけど。
ただ今だけはこの体温に溺れてたいなんて馬鹿なこと思った。
こんな愛にでも溺れてたいと思った。彼の言う通りまたいつか会えるならきっと私はこの地獄にまたも身を投げるのだろう
彼の私を抱きしめる手をそっと離れて、彼の笑い声も消えた。“今度は頬に鈍い痛みを感じた”何度も何度も次は頭を溝落を。
こんな惨状の最中、いつもの彼に戻ったと安心出来るのは世界でもきっと私だけだ。やっぱり運命だったんだね私たち。
残った注射針を私は力の入らない手で必死に握ってる。
そうだよ、またいつか会うんだもんね。
「またいつか。」
私は細く白い彼の手に腕を絡めた。

Next