1. 所詮、朝焼けを這う毒蛇だ
これは、愛の話だ。紛れもなく本当に。だってそこに愛があったから。それは誰がなんて言おうと愛の話だ。
ただ愛の話がハッピーエンドなんて言う決まり事がある訳でも無いから私は早々にして彼の部屋で人生を終えた。
人類の中でも美しい死に様だっただろう。
朝日が覗いたまだ薄暗い寝室で、彼が「またいつか」と泣きそうな顔をしていたのだけは鮮明に覚えている。
「またいつか。」
なんて言って震える手で注射の針を進めてく。
懇切丁寧にベットに寝かせられて殺される私は反抗もサラサラする気がない。だってこれは愛なんだってこの柔らかい手つきに触れた私だけが知っている。注射針のそれは毒であって毒じゃない。愛。愛だよ。けど、悲しいのも事実だ
彼と私の涙がぐちゃぐちゃになって私の視界はぼやけてく。
彼の嗚咽が響く響いてたのにそれは次第に笑い声に変わって、私を抱きしめた。彼に抱きしめられたのは初めてだった。最初で最後、そんなのも私の意識があるうちの話なんだろうけど。
ただ今だけはこの体温に溺れてたいなんて馬鹿なこと思った。
こんな愛にでも溺れてたいと思った。彼の言う通りまたいつか会えるならきっと私はこの地獄にまたも身を投げるのだろう
彼の私を抱きしめる手をそっと離れて、彼の笑い声も消えた。“今度は頬に鈍い痛みを感じた”何度も何度も次は頭を溝落を。
こんな惨状の最中、いつもの彼に戻ったと安心出来るのは世界でもきっと私だけだ。やっぱり運命だったんだね私たち。
残った注射針を私は力の入らない手で必死に握ってる。
そうだよ、またいつか会うんだもんね。
「またいつか。」
私は細く白い彼の手に腕を絡めた。
7/22/2025, 1:28:28 PM