【ただ君だけが、気づかない】
私には、どうしてもいないといけない君がいる。
居てくれないと私はてんでダメ。
何をやっても君に勝てなくて、いつも君の下に私はいる。
どうして張り合うのか、人に聞かれた。
だから私は答えた。
「だって、私はあの人より弱いんだって覚えさせなきゃ、あの人は私を同格に見てくるんだよ?同格は嫌じゃない。嫌じゃないけど私、あの人には弱くて小さくて愚かで、あの人だけのモノとして見てもらいたいんだ。……本人には内緒だよ?」
⸺指輪についた宝石が、時折不思議に光る意味に気づかずに。
【どこにいても、明確に】
じんわりと、首を絞める感覚がする。
どうやら、チョーカーを外していたことで起こっているようだ。
「銭湯来たときくらい取ってもいいじゃん…私だけならともかく、他の客もいるんだから」
誰にも聞こえないよう、だけど、私の首元には聞こえる程度の声量で愚痴を零す。⸺っ!
少しだけ、首を絞める力が強くなる。ムカつく。
「仕事中、よそ見し過ぎ…!」
そう言うと、首の締め付けは無くなった。…自覚があるならやめてほしい。ホントに。
「どんなに離れたって、私は変わらないのに…心配しちゃって。ばーか」
「あぁ、今年はなんでこんなに抹茶がいっぱいあるんだぁ……ヨヨヨ」
「(なんだ、ただの財布の紐が終わってる駄目人間か)…さぁ、今まで情報入れてなかっただけじゃないですか?」
「そかな…でもちょっち働いてるから、お給料入った後は、ちゃんと紐を固めるから(`・ω・´)」
「信用できませんねぇ…今日も買っていましたし」
「……( ;꒳; )ウッ」
【抹茶が…抹茶が多いよ今年…ブームなの……?】
「金平糖って、星くずみたいなんだっけ?……あー、星属性」
「⸺え、ん、はい?」
「いやね、五行とかの知識を軽く得たい、おすすめのその手の本って無いのかなって」
「あー………あぁ、そうですか」
「不器用だからネットで調べてみてもよく分からないし…古武術?とかいうのも知識としてほしいし」
「あなたって、無い物ねだりしすぎですよね。そのくせ意欲は表面上だけしかありませんし」
「はっはっは……そだねぇ。あ、金平糖無くなっちゃったや。他にお菓子いる?」
「いえ、帰ります……そういえば、いつまで私達に頼るんですか?」
「んぐっ?!……ごほっごほっ。だって、君ら起用すると何でもない日常会話がぽこぽこ出てくるからさ⸺っていない!?ちょっ、質問するだけして回答聞かずに帰るのは駄目でしょー!!」
【金平糖おいしい】
『⸺私ね、一つだけ叶えたい願いがあるの』
そんな言葉を初めて聞いた時のことは覚えている。
だが私は、彼女の叶えたい願いを……忘れてしまった。
「おい竜神ユース!お前は、一つだけなら何でも叶えるんだろう?」
「あぁ、そうだ。其方は何を願うのだ?」
あぁ、また願いを持った者が私の元に訪れた。…此度は一体、どの様な願いを叶えさせるのだろうな。
「俺の願いはただ一つ…⸺俺様の師匠になれ、竜神ユース!」
「……は?」
「俺様は神なのだが、ほんの千年前に生まれたばかりの赤子同然な上、俺様自身の権能を持っていない。だからこそ、生まれはただの竜人でありながら、己が努力で神の座に辿り着いたお前の教えを請いたい!⸺さぁ願いを言ったぞ!叶えろ!」
……はは。馬鹿だ。バカだ、コイツ。でも、面白い。
あぁ、そうだ。欲に塗れた願いを叶えることより、この願いを叶える方が面白いことは、今私の前にいるバカでも分かるだろう。
「いいだろう。その願い、叶えさせてやる」
「よぉっしゃ!!!俺様はガベルだ!竜神ユース…いや、師匠!これからよろしく頼む!」
「…ふふっ。よろしくな、ガベル」
【その願いの果ては彼らに何をもたらすのか】