陽月 火鎌

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『⸺私ね、一つだけ叶えたい願いがあるの』

そんな言葉を初めて聞いた時のことは覚えている。
だが私は、彼女の叶えたい願いを……忘れてしまった。

「おい竜神ユース!お前は、一つだけなら何でも叶えるんだろう?」
「あぁ、そうだ。其方は何を願うのだ?」

あぁ、また願いを持った者が私の元に訪れた。…此度は一体、どの様な願いを叶えさせるのだろうな。

「俺の願いはただ一つ…⸺俺様の師匠になれ、竜神ユース!」
「……は?」
「俺様は神なのだが、ほんの千年前に生まれたばかりの赤子同然な上、俺様自身の権能を持っていない。だからこそ、生まれはただの竜人でありながら、己が努力で神の座に辿り着いたお前の教えを請いたい!⸺さぁ願いを言ったぞ!叶えろ!」

……はは。馬鹿だ。バカだ、コイツ。でも、面白い。
あぁ、そうだ。欲に塗れた願いを叶えることより、この願いを叶える方が面白いことは、今私の前にいるバカでも分かるだろう。

「いいだろう。その願い、叶えさせてやる」
「よぉっしゃ!!!俺様はガベルだ!竜神ユース…いや、師匠!これからよろしく頼む!」
「…ふふっ。よろしくな、ガベル」

【その願いの果ては彼らに何をもたらすのか】

3/11/2025, 7:43:57 AM