是綴

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9/4/2024, 11:14:31 AM

誘人灯 / きらめき

あなたが、真夜中の森にどうしても足を踏み入れるというのなら。
決して、自分が持つ灯りの輝きしか信じてはいけないよ。

きっと純粋なあなたのことだから
淡くきらめいて浮遊する光を、蛍だと思って追いかけて、捕まえようとしてしまうし、

きっと単純なあなたのことだから
遠くに見える色とりどりの光を、街の明かりだと思って安心しきって、真っ直ぐに光のほうへ向かうだろうね。


森の光は、皆等しく虚だよ。
幻の煌めきにつられた人間を、夜の森は決して離しちゃくれないから。


……って、忠告しておいたのに。一応。

9/3/2024, 11:23:26 AM

あいつのことなら / 些細なことでも

!探しています!
どんな些細なことでも構いません、この男性についての情報をお持ちの方がいれば、ご連絡ください。

身長は189cm、痩せ型で、野菜が好き。

服はパーカーにスウェットとか、ラフな物をよく着てた。

「おやすみ」って言う時の声が低い、「おいしー」って言う時の声は可愛い。

髪は薄茶色、私が先週染めた。
あいつは「俺には似合わないでしょ」って笑ってたけどめちゃくちゃ似合っ―――


おい、あいつのこと、誰も見てないはずねえだろ。
些細なことでもいいって言ってんだ、
あいつの後ろ姿でも声でも影でも気配でもいい、なんでもいいんだって!
なんでもいい、なんでもいいから、くそ、なんで、


だって、だってあいつは、昨日まで私と、

9/2/2024, 11:01:33 AM

灯台下暗し / 心の灯火

小さくあたたかい火が、灯ってしまった。
無愛想で、無感情で、いつもつまらなそうにしていて、
それが酷く美しくて愛おしかった、あの子の心に。

返せ、返せよ、美しかったあの子を返せ。


消してやればいいんだ!
あの子の家族、友達、宝物、全部、全部全部!

全て消したはずだった。
けどどうしたってあの子の灯火は消えなかった。
「ねえ、その火、誰のせいなの」

そう問うと、あの子はにこりと笑って(似合わないね)、
私の胸を、人差し指で突いた。

9/1/2024, 12:29:25 PM

黄泉たくない / 開けないLINE


「サイトウ が画像を送信しました」

という通知の後、

「おいこっち地獄なんだけどwヤバすぎ!暑すぎかってw」
「お前は絶対こっち来んなよw」

という通知がスマートフォンに入った。

サイトウは私の親友だ(親友だった)。
なのに(だから?)、私はそのメッセージを開くことができないでいる。

この前、お前の骨を拾ったばかりだぞ。
その画像、何が写ってんだよ、なあ、おい。

8/5/2024, 10:37:59 AM

なんでもない同士のための / 鐘の音


「別にさー、恋人同士でしか鳴らしちゃいけない決まりなんてないよねえ」

海の見える丘に設置された、小綺麗な『恋人たちの鐘』。
……を、ハチャメチャな勢いで豪快に鳴らした、男友達。

「うるせっ」

甲高い、ふざけた調子の鐘の音が、海辺の公園に響き渡る。キンとした音に思わず顔を顰めれば、あいつは俺の顔を見るなりカラカラと笑った。

「もう一回、僕と一緒に鳴らしてよ」
「なんの意味が?」
「君の面白い顔が見れるでしょ」
「……お前の面白い顔も見せろ!」

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