「そん時はあたしがアンタを助けちゃうんだから!」
屈託のない笑顔でキミはそう言った。
「助けるんじゃなくて助けられる側だと思うんだけど…」
やれやれと言いたそうに君は呟く。いつまでもこの時間が続けばいいと思っている。この3人で馬鹿やって怒られて、時には泣いて笑って。
「助けるって言ったのに助けられちゃった…」いつものようにヘラヘラと笑う。
「いいから!喋んないで!なんで血が止まらないの!?」
「ねぇ…もうダメだよ。あたしは助からない」
諦めんじゃないわよ。アイツも待ってるっつーの。またみんなでスイーツバイキング行きましょうよ。まだ行ったことないところやしたことないゲームやってバカ騒ぎしましょうよ。
「あんたに言いたいことあったんだよね。友達になってくれてありがとう。これから先あんたは特に迷うことだらけだろうけどさ、いい人間になってよ。正義も悪もあんたからしたらそんなに大差無いんだろうけどさどうせならいい人間になってよ。その方が素敵だしね。アイツにもよろしくね。ごめんね」
そう言ってキミは目を閉じた。
「またあの夢か」
あの日からずっとあの時の夢を見る。あの時の光景が脳裏から離れないのだ。まるで呪いのように。
「やっぱり君には向いてなかったんだね」
白髪を揺らしながら君は言う。
「あ、でもまだここに居たいって言うんなら僕は何もしないよ。連れ出しもしないし…無理矢理やったら僕が怒られるし…」
そっちが本心かといつも通りの君に少し安心する。
「いや、俺には向いてなかったよ。この世界は残酷すぎた」
涙を拭い、まだ居る君に手を伸ばす。
「助けて」
ただその一言だけ発すると君は分かったように
「任せてよ。その為に来たんだ」
俺たち2人は言う。
「「帰ろう。理想郷へ」」
「大丈夫よ。私はいつでもあなた達のそばにいるわ」
小さかった私と弟の頬を撫でてくれた母。
そんな母も五年前に亡くなった。
「本当にお前達は可愛いな〜」
私達を抱きしめながら父は言う。
私は中学三年生になり、弟も中学一年生になった。
そんな父も四年半前に居なくなった。
今、私は大学一年生になり、弟は高校二年生だ。
今でも父は見つからないままだ。
確か父さんが居なくなった日もこんな綺麗な夜空の日だった。
「ねぇさん。そんなところにいたら風邪ひくよ」
「ちょっとだけ夜風に当たりたかったのに…わかった、すぐ戻るから先に戻ってて」
「はいはい。早く戻ってきてね。僕が桐絵に怒られる」
扉が閉まる音がして私はもう一度、星が散らかる空を見た。
すると流れ星が通る。
「私の父さんもこの景色を見てるかしら」
そう呟くと自然と私の頬が濡れた。
雨が降った訳でもないのに。
────両親を失ったとある姉弟の話────