「お父さん!行ってきます!」
その言葉が毎日毎分毎秒頭から離れない
妻は数年前に他界しており娘と二人暮らしだった
朝少し会話をして彼女が学校へ行くのを見送り
私が仕事から帰った時におかえりって出迎えてくれて
夕食時に何気ない会話をして眠る
こんな当たり前の日常がずっと続くと思っていた
ある日、一本の電話がかかってきて
受話器を手に取り話を聞いた途端全身から力が抜けた
娘が交通事故で亡くなった
次に娘と対面した時は原型を留めていなかった
どれくらい日が経っただろう
目の下にくまができ涙が止まらず体が動かなかった
あの時私が止めて少しでも時間がずれていれば
あの時私がついて行ってれば
変わることの無い事実に一人嘆いていた
「行ってきます!」
朝同じ時間になるとその声が鮮明に聞こえてきた
娘の声だ
娘の最後の??いやこれからの声だ
毎日私を応援してくれているのかな
ありがとう
前を向いて歩けるよ
また抱きしめてあげたいな
(最後の声)
「私は人を愛したことが無い」
そう人が話しているのをよく見かける
確かに彼らが言う事は一理ある
恋愛的意味で愛したことないと解釈するともっともだ
でもそれは本当だろうか
私たちが産まれた時
お母さん、お父さんの存在を認知し
一瞬でも愛した瞬間があったのではないだろうか
本人たち以上に私を気遣ってくれて
ギュッて抱きしめてくれて
なにか安心する
これは列記とした愛だと思う
「私は自分を愛したことがない」
そう言ってる人たちに言いたい
自分を愛さなくてもいい
認めなくていい
でもあの人たちがいるじゃん
気遣ってくれてギュッでしてくれて
私からの愛情以上に愛してくれる人が
そんな人を素直に愛そう
(小さな愛)
君は頭ひとつ抜けていて
私にとっては辿り着けない存在
学力もトップ、運動もずば抜けていて
周りにはいつも人がいるほど人気者
幼なじみな私とは天と地ほどの差がある
私はたどり着くはずのない君の背中を追い続けている
でもね
君はいつも帰る時は私を誘ってくれる
そして放課後も毎回君から遊びに誘ってくれる
私なんかよりも一緒に帰る人とか
遊ぶ相手なんか沢山いるのに
疑問に思ったときそう君に聞いてみた
そしたらね
「だってさ!君ほど私を大事にしてくれる人はいないし、私が一番素で話すことの出来て心おける存在だから一緒いたいに決まってるじゃん!ずっと前から私は君の背中を追ってきたから、感謝してるよ!」
そう言ってくれた
私はひとつ後悔した
今まで私はたしかに君の背中を追ってきたけど
それはあくまでうわべだけのもの
つまり学力や運動、人気さだけだったけど
君が僕を尊敬してくれるように
内面を見てくれていたのだと思った
今ではそんな君の内面をとても尊敬している
(君の背中を追って)
(20年前、5歳)
ねーねー、せなのことすきぃー??
ぼくねぼくね!せなちゃんのことだいすきだよぉ!
(15年前、10歳)
ねね!うちのこと好きー??
僕はせなのことずっと大好きだよー!
(10年前、15歳)
うちのこと好きっしょ?
はぁ??お前のことなんか嫌いだよーだ!
もぉ、こっちは本気なのに、、
(7年前、18歳)
俺、、子供の頃からずっと好きだった、、
だからさ、付き合って欲しい!
もぉ、やっと正直になった〜(照)
ほら!よろしくね!
(現在、25歳)
ねぇ、私のこと、、好き??
当たり前だろ!結婚するんだろ?笑
うん、ありがとう!幸せにしてね!
(好き、嫌い、)
あれ、、ここは、、どこ、
目の前がとってもぼやけていて
何かが覆いかぶさっていてあまり動けないや
「生存者発見!」
数人の大人たちが僕を見つけてくれた
彼らは上に乗っていた物を取り除いてくれた
開放され周りを見渡すとそこには地獄が待っていた
空は暗闇と煙に包まれて
建物が轟々と燃え
人々は原型をとどめないほど焼けただれ
うめき声が何度も何度もこだまし続けていた
「お母さん、、お母さんはどこいったの??」
瓦礫の散らばる地面を素足で駆けて
色んな場所を見て回ったが
どこもかしこもうめき声と包帯の巻かれた人だらけ
「僕は、、孤独、、、なのかな、、、」
目から大量の涙が降り注いだ
すぐに蒸発しちゃってあとも残らない
僕の涙を求めて人がよってきた
「みずを、、みずを、くれぇ、、」
すると突然空から黒い雨が降ってきた
彼らは口を上に向けて雨を飲んでいた
あれ?いつもと香りが違う、、
なんだか嗅いだことのない変な匂いだ
ああ、何気ない日常は一夜にして壊されたのか
家も空も涙も雨もそして人間も
僕は目の前が真っ暗になった
(雨の香り、涙の跡)