仁翠

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2/28/2024, 9:42:56 AM

#現実逃避

保留

2/27/2024, 9:26:31 AM

#君は今

おはよう。
寝ぼけて放った言葉は誰にも拾われない。1人で寝るには大きすぎるダブルベッド。隣半分には皺のないシーツが広がる。かすむ目を擦りながらトースターに入れた食パンは1枚分。

 あぁ、そうか君はもうここにはいないのか。

 3年付き合った彼女。同棲もしていた。2ヶ月前に別れてからというもの、失恋の傷は時間が解決するとは名ばかりで、海の底に沈んだかのような生活をしている。
 別れた理由は些細な喧嘩。喧嘩の内容など思い出したくもないが、俺が悪かった。自分の非を謝ることができずに別れ、彼女は出ていってしまった。
 君は今、何をしているか。他の男と幸せな時を過ごしているのだろうか。ここに居なくとも、別の場所で上手くいっているのであればいいと思っている自分がいる。こんなにも立ち直れずにいるのに、可笑しな話だ。
 赤字で記念日が書かれたカレンダー、2人の写真が入ったフォトフレーム。彼女がいたときのまま片付けられていない部屋は、喪失感を煽る。

「ごめんの一言すら言えないのか。馬鹿だな、俺は」

吐いた言葉は空気の一部となった。
 チンッというトースターの無機質な音でハッとする。少々焦げかけてしまった食パンの香りだけが漂っていることに気がついた。君が毎朝飲んでいたココアの香りは、もうしなかった。

2/26/2024, 9:51:48 AM

#物憂げな空

ただ、一点を見つめる。ぼんやりとした視界の先には、古びた3分の砂時計。先ほどなんとなく逆さにしてからというもの、サラサラと秒が落ちてゆく。カーテンの隙間から差し込む光に照らされる砂時計を見て思い出す。

そういえば、この砂時計を手にした日はいつになく清々しく晴れていたっけ。

思い立ってこじ開けた空は、理不尽なまでに青い。その眩しさに引け目さえ感じた。
あの頃の自分は、純粋だったのだ。美しい青空を見て心が昂った。気分が晴れた。しかし今はどうだろうか。青空の美しさを鬱陶しく思い、気分は雨模様だ。
空模様は、それを目にする人間の心模様によって明朗にも、物憂げにもなる。

「物憂げな空だなぁ。いや、それは私のほうか。」
情けない自分に気づいてしまったらしい。

砂時計が落ち切った。

2/24/2024, 11:48:35 AM

#小さな命

「命って...儚いよねぇ」
背を向けて青空を眺める君の姿と共に、その言葉が何度も反響する。もう、耳障りなくらいに。
形のない記憶というものは、これほどまでに人の人生を左右するらしい。君の存在を忘れないというのは良いことなのかもしれないが、君の存在に縛られている僕はなんて浅はかなんだろうか。君の声すら忘れた僕に、何か意味があるのだろうか。

__真冬の候。真っ白な、命の始まりにも...終わりにもなる部屋。ベッド1つの閑散とした空間で澄み渡る青空を眺める君。口にした言葉は迫り来る“終わり”を危惧する様子も、憂色を浮かべる様子もなく、ただただ無頓着だった。いや、微笑さえ感じた。秒針が刻一刻と進んでいく。カチ...カチ...という機械音だけが響く。僕は、静寂を破ろうとはしなかった。

それから何日経っただろうか。
純白のベッドに横たわる1人少女の時間は終わりを告げた。ふと、秒針の音が聞こえないことに気がついた。壁掛け時計が止まっている。窓の外には彼女が見たい、見れないと嘆いていた桜並木。それも数日後には風と共に散っていく。人も、機械も、自然も、命というものは小さく儚いらしい。

僕は、命の儚さを教えてくれた少女に縛られて生きていくしかないみたいだ。