真っ暗だった
何も見えない
ずっと前へと歩いて・・・
どこへ行けばいいのかもわからず歩き続けて・・・
もう、足があがらない程歩き続けて・・・
とうとうその場しゃがみ込んでしまう。
────寂しい
────苦しい
────助けて
そのまま暗闇にのまれそうになったその時
『────!』
なにかが聴こえた気がした。
顔を上げて辺りを見回す。
『────────!!』
また聴こえた。
最後の力を振り絞って声の方へと歩き始めた。
少し歩くと一点の光が見えた。
『────!!!』
あぁ、君の声だ。
呼んでいる。
泣いている。
光が徐々に強く、大きくなっていく
暖かい、力が湧いてくる。
逢いたい
早く逢って、君の涙を拭ってあげたい。
今行くから・・・泣かないで・・・
重い足を引摺りつつ歩き続けた。
たった一つの・・・希望に向かって
君に触れたい
貴方に触れたい
『誰にも触れさせたくない』
君を離したくない
貴方の側にいたい
『誰にも渡したくない』
君の笑顔がみたい
貴方の笑顔がみたい
『他の人になんて見せなくていい』
君にそんな醜い自分を知られたくない
貴方にそんな醜い自分を知られたくない
『────────だから』
そんな醜い気持ちに蓋をした。
「君と一緒ならどこだって平気だよ」
そう笑う貴方の笑顔はどこか寂しさをにじませていた。
ずっと慣れ親しんできた場所だから、離れて遠い街に行くのは寂しいし、不安だよね。
「貴方だけこっちに残っても」
時間をとって会いに来るから、というとアナタは首を横に振る。
「ありがとう・・・でも君の側にいたいから」
────それに、と君は続けた。
「君と新しい街に行く新生活だって楽しみなんだぜ!」
そう言って笑う貴方の笑顔は、不安ではなく期待に満ち溢れていた。
今日は、やるべきことはやったよね?
本当に?
やりたくない仕事もやったし頑張ったよ?
本当に?
嫌なことばっかりだし、不安ばっかりなんだ。
そうだね。
特に今日は気持ちが沈んで辛いんだもん。
じゃあ、今日ぐらいはサボっちゃう?
うんうん、そうしようそうしよう。
じゃあ寝ちゃう?
寝たら明日になっちゃう。
寝なくても明日になるよ。
まぁ、そうだよね。
寝たら綺麗さっぱり、なんて切り替えられたら楽なのに。
そういう人もいるよね、君には無理だ。
ね~
じゃあ、気が済むまで自堕落に生きようか?
それで後々苦しいのは自分だよ?
楽しいことがすぐに嫌なことで上書きされるんだもん。
上書きなんかされてないよ。
そうかな、そうかも・・・・・・
時間が解決してくれることもあるよ。
じゃあ、もう寝るしかないな。
寝るしかないな。
そもそも寝たくないだけで眠いし
じゃあ、寝るか
寝よう寝よう
あぁ寝よう
『現実逃避』
今でも時折思い出す
「それじゃ、また」
「うん、また」
次はいつ会えるかわからないのに、そんな軽いノリの別れだった。
諦観しているわけじゃない。
寂しいし、悲しい・・・
でも、私達は受け入れるしかなかったからせめてお互い前を向いていこうと決めた。
いつか再び会えることを信じて・・・
君は今、元気ですか?