大狗 福徠

Open App
12/1/2025, 3:08:23 PM

凍てつく星空

このクソ寒い真夜中の下に、
お前はなんでか裸足で歩いていやがった。
部屋で寝ていたはずなのに
何をのうのう歩って回っていやがるととっ捕まえる。
一度や二度なんてもんじゃぁない。
何百回だ。
何がしたいんだおめーはと何度も問いかけちゃ見るが、
何言ったってお前はほうけた顔をしたまんま
ぽけッとこっちを見てだんまりを決め込むんだ。

何か無くしたのか?
ううん
家にいるのが嫌になったのか
ううん
外が気になったのか?
ううん
じゃあなんだってそんなで出てきたんだ、お前は?
わかんない

喋ったとてこんな調子である。
壊れたドライヤーで髪を乾かすよりもよっぽど時間がかかるのだ。
そのうちお前は俯いて泣きそうになる。
そうなると俺はどうにもできなくなって、
お前を抱き上げて冷たくなった体を温めながら帰るんだ。
そのうちそのうち大きくなったお前は
やっぱりクソ寒い真夜中の下に裸足で出ていく。
何が楽しいんだかさみしいんだか、
ほうけてるわけじゃない空っぽの顔で歩き回る。
そして決まって俺の帰り道で動かなくなるんだ。
帰りを待っているわけじゃあないだろう。
お前はきっとそんなこたぁしねぇ子だから。
大きくなったお前のことを抱き上げるには俺の身体じゃ足んなくて、
靴と靴下をお前にやって手ぇ繋いで歩って帰るんだ。
このクソ寒い真夜中の下で、裸足で歩いて帰るのが俺になった。
お前が何を考えてんのか今でもわかんねぇが、
一個だけ言えるなら、
お前はいつだって変わらんやつだよ、このクソ寒い真夜中みたいに。

11/23/2025, 7:56:01 AM

紅の記憶

思い出す貴女はいつだって夕焼けの中にいる。
青いリボンの巻かれた麦わら帽子をかぶって、
私に背を向けた茶髪のロングの貴女。
靡く真白のワンピース。
肩から覗くひまわりとネモフィラの花束。
全てを塗りつぶす紅の中で、
貴女の纏う色だけが鮮明に焼き付いている。
恋などという下賤なものではない。
愛などという高尚な思いでもない。
笑顔の似合う貴女。
私ではない誰かに微笑む貴女。
今はどこにいますか。
誰かと幸せになっていますか。
愛しい我が子を抱いているのですか。
大切な誰かと手を繋いで歩いたりするんですか。
どちらにせよ、もうお目にかかることはないでしょう。
夏の貴女よ、どうかお幸せに。

11/16/2025, 2:31:43 PM

君を照らす月

10/30/2025, 10:00:33 AM

tiny love

見慣れた路地裏の隠れた喫茶店。
その奥の奥の方にいつもあなたは座っている。
湯気の出たカップを片手に、本を読みながら。
私はいつもカウンターに座るから、あなたと目が合ったことはない。
栗毛色の髪をした、赤い雫のピアスのあなた。

10/24/2025, 5:48:27 PM

秘密の箱

一人ひとりが違う種族のように多種多様な僕ら。
ですからいつだって他人の頭の中身なんてわからないものでして。
キラキラ輝くマドンナの君は先日死にました。
今はギラギラベタつく復讐者です。
あなたはいつだって強かった。
勉強も運動も話も大変上手で見目もよくって。
非の打ち所なんて一切ない。
まさに素敵に無敵。
しかしあなたの内心は地獄であったらしくて。
毎日毎日補充した分以上に削り取られる心は
疾うの昔に底をついていたようで。
あなたは頭の中身を、思考をぶちまけて叫びました。
いつだっていつだって私は一人。
だから素敵に無敵になるんだよ。
だってそうじゃない?
じゃなきゃ生きづらいじゃない!!
笑って、泣いて、暴れて、蹲って、君は大変忙しそうだった。
あなたの中身はぶちまけられました。
ですからこんどはこちらのばんではないでしょうか。
あなたのようにキラキラしていたら壊れてしまうなら。
完璧だったからぶっ壊れてしまうのなら。
はじめからなんにもないままぶちまけてみましょうか。

Next