大狗 福徠

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凍てつく星空

このクソ寒い真夜中の下に、
お前はなんでか裸足で歩いていやがった。
部屋で寝ていたはずなのに
何をのうのう歩って回っていやがるととっ捕まえる。
一度や二度なんてもんじゃぁない。
何百回だ。
何がしたいんだおめーはと何度も問いかけちゃ見るが、
何言ったってお前はほうけた顔をしたまんま
ぽけッとこっちを見てだんまりを決め込むんだ。

何か無くしたのか?
ううん
家にいるのが嫌になったのか
ううん
外が気になったのか?
ううん
じゃあなんだってそんなで出てきたんだ、お前は?
わかんない

喋ったとてこんな調子である。
壊れたドライヤーで髪を乾かすよりもよっぽど時間がかかるのだ。
そのうちお前は俯いて泣きそうになる。
そうなると俺はどうにもできなくなって、
お前を抱き上げて冷たくなった体を温めながら帰るんだ。
そのうちそのうち大きくなったお前は
やっぱりクソ寒い真夜中の下に裸足で出ていく。
何が楽しいんだかさみしいんだか、
ほうけてるわけじゃない空っぽの顔で歩き回る。
そして決まって俺の帰り道で動かなくなるんだ。
帰りを待っているわけじゃあないだろう。
お前はきっとそんなこたぁしねぇ子だから。
大きくなったお前のことを抱き上げるには俺の身体じゃ足んなくて、
靴と靴下をお前にやって手ぇ繋いで歩って帰るんだ。
このクソ寒い真夜中の下で、裸足で歩いて帰るのが俺になった。
お前が何を考えてんのか今でもわかんねぇが、
一個だけ言えるなら、
お前はいつだって変わらんやつだよ、このクソ寒い真夜中みたいに。

12/1/2025, 3:08:23 PM