大狗 福徠

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4/28/2025, 4:10:15 AM

ふとした瞬間
刹那的な感情。
一抹の心情。
儚い気持ち。
朧気な気分。
ふとした瞬間に胸のうちに巣食うそれらを、
見逃すわけには行かない。
何よりも愛したあなたに与えられたものどもなのだから。
子供は幼い大人であり、大人は老いた子供である。
海は大きな雨粒であり、雨粒は矮小は海である。
ふとした瞬間に潰えるそれらを、
見逃すわけには行かない。
何より愛を与えてくれらのだから。
ふとした瞬間に滅びるその時まで。
愛してみせよう。
貴方がたがなんと言おうとも、
私には貴方がたを愛し守る権利があるのだから。

4/20/2025, 12:43:27 PM

星明かり
夜中、いつものようにパソコンを開いてゲームを起動する。
真っ暗な部屋の中、画面から青白い光が放たれる。
確実に目が悪くなるだろうがこれでいい。
長生きするつもりなんてないのだから。
慣れた手つきでオープンワールドに入り込む。
いつも通りのソロプレイで、また最初から。
資材を集めて、ツールを集めて、ボスを倒して。
いつの間にやらゲーム内時間が夜中になっている。
見えた夜空はあまりにも美しくってグラフィックの進化に驚いた。
敵がいるのはいつの目の前だったから
空なんて見上げたことがなかったんだ。
思わず窓の外を見つめる。
小説だったらゲームより美しいとか書かれるんだろうが実際はそんなことはなく、平々凡々な空が広がるのみだった。
それでも一等星の星明かりがこちらを照らしていた。

4/19/2025, 11:35:15 AM

影絵
「ちいちゃんの影送り」。
僕らの世代は小学校の時にみんな教科書で見たお話だった。
そしていつも、それを見た学級は影送りをしてた。
青い青い空に浮かぶ自分の形をした雲もどき。
それが面白くて仕方がなくてよくやっていた。
思うに、当時の僕らにとってそれは空想を描く友人でありながら
決して手の届かない、触れることの叶わない神聖なものだった。
それに、擬似的ではあるけれど触れて、その上穢す事が出来たのがあまりにも至福だったんだろう。
僕だけは、大人になってもそれがやめられなかった。
通勤中、買い物中、ドライブ中。
いつだって暇を見つけては影を送って穢し続けた。
送った影ばかりが溜まった汚い空が愉快で仕方がなかった。
醜い影絵が空を覆ったように見えて。
思わず足を踏み外せば送った影に僕も覆われるのだろうな。

4/18/2025, 12:44:29 AM

静かな情熱
もう辞めてしまおうと思った。
こんなに続けてたって生きてけないって、もう意味ないって。
それでも辞めらんなくて、こき下ろされても諦められなくて。
でも、それでもようやく踏ん切りついて全部全部、
今までの分を纏めて潰してぐちゃぐちゃにして。
やっとの思いでも捨て切らん無くて、
残ったもんは忘れたふりした。
それでも。
そんなになっても。
心の奥底で燃えている。
焔が煌々と、赤より熱く、青々しく蒼炎となっている。
もう道具もない。
さきを示す光もない。
だから、そうなったから。
今尚煌々と焚き付けられている。
この逆境を薪に、静かな情熱が火の粉を吹いた。

4/15/2025, 5:25:06 AM

未来図
明日は早く起きようね。
明日は絶対ご飯を食べきってね、
明日こそは電車に間に合わせてよ
明日は、明日は絶対、明日こそは、明日だけは。
どうにも間に合わないことばかりで、
とうとう親に定められた未来図というものは破綻した。
逃げ出した俺はとうとう行き倒れて、道路に横たわった。
決めつけられてきた人生で、一人で生きる術など知る由はなかった。
霞む視界にぼやける景色。
なんとなく死ぬんだなって思った。
皆に囲まれて死になさい。
決められた人生の最後の図。
蔑まれて囲まれて、ふざけて撮られる写真達。
それだけ守れたことに安堵した。

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