影絵
「ちいちゃんの影送り」。
僕らの世代は小学校の時にみんな教科書で見たお話だった。
そしていつも、それを見た学級は影送りをしてた。
青い青い空に浮かぶ自分の形をした雲もどき。
それが面白くて仕方がなくてよくやっていた。
思うに、当時の僕らにとってそれは空想を描く友人でありながら
決して手の届かない、触れることの叶わない神聖なものだった。
それに、擬似的ではあるけれど触れて、その上穢す事が出来たのがあまりにも至福だったんだろう。
僕だけは、大人になってもそれがやめられなかった。
通勤中、買い物中、ドライブ中。
いつだって暇を見つけては影を送って穢し続けた。
送った影ばかりが溜まった汚い空が愉快で仕方がなかった。
醜い影絵が空を覆ったように見えて。
思わず足を踏み外せば送った影に僕も覆われるのだろうな。
4/19/2025, 11:35:15 AM