大狗 福徠

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4/20/2025, 12:43:27 PM

星明かり
夜中、いつものようにパソコンを開いてゲームを起動する。
真っ暗な部屋の中、画面から青白い光が放たれる。
確実に目が悪くなるだろうがこれでいい。
長生きするつもりなんてないのだから。
慣れた手つきでオープンワールドに入り込む。
いつも通りのソロプレイで、また最初から。
資材を集めて、ツールを集めて、ボスを倒して。
いつの間にやらゲーム内時間が夜中になっている。
見えた夜空はあまりにも美しくってグラフィックの進化に驚いた。
敵がいるのはいつの目の前だったから
空なんて見上げたことがなかったんだ。
思わず窓の外を見つめる。
小説だったらゲームより美しいとか書かれるんだろうが実際はそんなことはなく、平々凡々な空が広がるのみだった。
それでも一等星の星明かりがこちらを照らしていた。

4/19/2025, 11:35:15 AM

影絵
「ちいちゃんの影送り」。
僕らの世代は小学校の時にみんな教科書で見たお話だった。
そしていつも、それを見た学級は影送りをしてた。
青い青い空に浮かぶ自分の形をした雲もどき。
それが面白くて仕方がなくてよくやっていた。
思うに、当時の僕らにとってそれは空想を描く友人でありながら
決して手の届かない、触れることの叶わない神聖なものだった。
それに、擬似的ではあるけれど触れて、その上穢す事が出来たのがあまりにも至福だったんだろう。
僕だけは、大人になってもそれがやめられなかった。
通勤中、買い物中、ドライブ中。
いつだって暇を見つけては影を送って穢し続けた。
送った影ばかりが溜まった汚い空が愉快で仕方がなかった。
醜い影絵が空を覆ったように見えて。
思わず足を踏み外せば送った影に僕も覆われるのだろうな。

4/18/2025, 12:44:29 AM

静かな情熱
もう辞めてしまおうと思った。
こんなに続けてたって生きてけないって、もう意味ないって。
それでも辞めらんなくて、こき下ろされても諦められなくて。
でも、それでもようやく踏ん切りついて全部全部、
今までの分を纏めて潰してぐちゃぐちゃにして。
やっとの思いでも捨て切らん無くて、
残ったもんは忘れたふりした。
それでも。
そんなになっても。
心の奥底で燃えている。
焔が煌々と、赤より熱く、青々しく蒼炎となっている。
もう道具もない。
さきを示す光もない。
だから、そうなったから。
今尚煌々と焚き付けられている。
この逆境を薪に、静かな情熱が火の粉を吹いた。

4/15/2025, 5:25:06 AM

未来図
明日は早く起きようね。
明日は絶対ご飯を食べきってね、
明日こそは電車に間に合わせてよ
明日は、明日は絶対、明日こそは、明日だけは。
どうにも間に合わないことばかりで、
とうとう親に定められた未来図というものは破綻した。
逃げ出した俺はとうとう行き倒れて、道路に横たわった。
決めつけられてきた人生で、一人で生きる術など知る由はなかった。
霞む視界にぼやける景色。
なんとなく死ぬんだなって思った。
皆に囲まれて死になさい。
決められた人生の最後の図。
蔑まれて囲まれて、ふざけて撮られる写真達。
それだけ守れたことに安堵した。

4/13/2025, 10:12:26 AM

ひとひら
神秘・崇高美
ガーベラの花びらが落ちていく。
茎を切られ、傷を冷水に晒されたあれらは何を思うのだろうか。
ガーベラは群れでは咲かない。
一つ一つ、花の一欠片ずつが崇高に、気高く咲き誇る花だ。
硝子の瓶に差し替えられたガーベラ。
葉は切り落とされ、花だけが顕となっている。
その美しさを女の裸体のようだと言ったものが居る。
サモトラケのニケの様な、損なわれたゆえの美しさであると。
尊く生まれ、花を迎えては胴を切り落とされ民衆に晒される。
その上で、しかし美しさは損なわれていない。
尊厳も命も刈り取られ、ひとひらの儚い姿がある。
まるで朝露のようだ。
醜く雁字搦めにされて尚、貴方は神秘性を保っている。
内に秘められたそれを凪いだまま、
ただ花のひとひらになるまで、
そうなっても貴方はまさしく神秘であった。
塗り替えられることのない崇高美。
ガーベラは、花びらが落ちきった。

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