ひとひら
神秘・崇高美
ガーベラの花びらが落ちていく。
茎を切られ、傷を冷水に晒されたあれらは何を思うのだろうか。
ガーベラは群れでは咲かない。
一つ一つ、花の一欠片ずつが崇高に、気高く咲き誇る花だ。
硝子の瓶に差し替えられたガーベラ。
葉は切り落とされ、花だけが顕となっている。
その美しさを女の裸体のようだと言ったものが居る。
サモトラケのニケの様な、損なわれたゆえの美しさであると。
尊く生まれ、花を迎えては胴を切り落とされ民衆に晒される。
その上で、しかし美しさは損なわれていない。
尊厳も命も刈り取られ、ひとひらの儚い姿がある。
まるで朝露のようだ。
醜く雁字搦めにされて尚、貴方は神秘性を保っている。
内に秘められたそれを凪いだまま、
ただ花のひとひらになるまで、
そうなっても貴方はまさしく神秘であった。
塗り替えられることのない崇高美。
ガーベラは、花びらが落ちきった。
4/13/2025, 10:12:26 AM