どうして俺にも連絡が回ってきたのかわからない。
ただあいつが亡くなったのは確からしい。
この歳だ。いくらなんでも若すぎる。
…あいつ程才能のあるやつはまだまだ生きるべきだろ、
ふと足を止めた。
こんなにも自然とあいつを認める言葉が出るとは自分のことながら意外だった。
薄々気がついていた。そして今になって向き合うなぞ、
もう手遅れだということも。
“憧れだった”
“成功してて何よりだ”
“どうしてお前が”
“お前が、正当に評価される世の中であって欲しかった”
飲み込む音もなく。
『言い出せなかった「 」』
今日もなんとか家に帰ってきた。
ただいま、口に出したその瞬間、聞こえる足音。
つめが当たる音、ともいえる。かわいくてたまらない。幸せの音だ。
しっぽぶんぶんしながら一直線に向かってくるかわいいきみ。
やっと帰ってきた!おかえり!待ってたよ!
アフレコしつつ、目の前の…満面の笑みのもふもふを見つめた。
「足音」
暑い、でも爽やかで、
目に映るもの全てが瑞々しかった夏は、何処へ行ってしまったの。
そっか。
もう過去なのね。
ねえ知ってる?
あなたは、あなたといるときだけは、わたし「
」 ううん。なんでもないわ。
夏は延長させるものって相場が決まっているでしょう?
エンドレスエイトしかり、8月32日しかり。
取り残されないようにね わたしみたいに
「終わらない夏」
あのシーンが良かったと談笑する貴方の話が、いやに気になって聞き耳を立てるなんて、私らしくもなかった。
一方の貴方はきっと最初から見抜いていて、褒められない行為をする私に、一番穏便に済ませられる対処をしただけ。
じゃなきゃ、それほど仲がいいわけでもない私に、あんな、眩しいほどの笑顔、もとい光線を浴びせるなんてのはしない。
ついに来てしまった。
見るからに私好みの映画の予告を一瞥し、真っ先に券売機へ向かう。
一生縁はないと思っていたのに。そのきっかけも。
これから私は、漫画の実写映画を見る。
「小さな勇気」
野良猫って本当にいるんだな。
そう思いながら、走り去った黒猫を見やった。
やっぱ夜の散歩は心地いい。特に今日は気分がいい。
何せお手本のような三日月の夜、黒猫に出会ったのだ。
これほど…『月に吠える』ような夜もないだろう。
後必要なのは おわ「わぁ、こんばんは!」…え
思わず振り向くと人が二人いて、たまたま知り合いと出会ったらしかった。
心臓がうるさい。
君の声で、僕に呼びかけられた気がしたのだ。
「わぁ!」_「猫」 萩原朔太郎『月に吠える』