蝶も花も、容易く壊れる
愛そうと思えば思うほど、それが出来なくなる
愛されるのが怖い私だって同じだ
愛すのも、愛されるのも、怖い
失うのに、何故か愛してしまう
どうせ私を置いていく癖に
君のせいだ
彼奴は太陽みたいに眩しくて、手が届かない。
彼奴はいつも光の元に立っていた。そんな彼奴を、俺は木陰で眺めていた。目を奪われていた。肌の白い彼奴が日の元に出ていると、どこか幻想的で美しい映画のワンシーンの様だった。
彼奴が太陽ならば、俺は月なんだろう。
彼奴は太陽の元にいるくせに、目を離せばすぐこちら側に来てしまう。それに、彼奴がこちら側に来るのは俺も困る。太陽に照らされていなければ、月は見え無くなってしまうのだから。
今日も彼奴は太陽の下で笑っている。
そんな彼奴を木陰から眺めている。
いつも通りだった。
空は晴れ渡って、暖かい風が吹いている。
鐘の音が、純白の衣を身にまとった彼女を祝福する。
私は、何も言えなかった。言いたいことは沢山あるのに、全て頭の中で纏まりが無くなっていく。喉に突っかかって言えない。
「貴方は幸せ?」
彼女からそう問われた瞬間、何も言えなくなった
「…そろそろ起きたまえよ、ワトスンくん」
もうとっくに太陽が登りきっているというのに、私の相棒兼助手は未だに夢の中だった。すやすやと寝息を立てて、5分前には傍に立っていた僕には全く気付いちゃいない。
彼が目を覚まさない限り、僕の冒険は始まりやしない。さぁ早く起きたまえよワトスン。僕の相棒。僕の親友。
咥えていたパイプから口を離し、彼の手に唇を添えた。
「……これでも君は起きないのかい。」
少々呆れつつ、彼が目を覚ますのを待った。
また、病室がひとつ空いた。
空になった病室の窓から外を見下ろすと、楽しそうに笑っている男の子とその家族が抱き合っていた。
ふと、少しだけ口角があがる。
こちらに気付いたのか、男の子が私に手を振った。
「ありがとう!」
そう言ってくれた。
手を振り返して、後ろを振り返ると、同僚がニヤニヤとしてこちらを見ていた。
顔が赤くなる。見られた。最悪だ。
「まさか君にもそんな一面があったんだな?ふーん?」
「減給にしてやる」