彼の手を握る。
「行かないで……あなたがこのまま行ったら、
もう、二度と会えない気がするから……。」
彼は優しくて、しばらくお話をしてくれた。
でも、彼が帰らなきゃいけない時間になって。
これ以上、引き止められなくて。
彼の背中に声をかける。
「帰り道、本当に気をつけてね……。」
彼はわかった。って言ってここを離れた。
数分後、外からスキール音が聞こえ、
その後ガシャーンとなにかにぶつかった音がした。
暴走車が人にぶつかったらしい。
私は嫌な予感がして、外を見る。
当たってしまった。
ぶつかられたのは彼で、彼は血を流して倒れていて、
彼はすぐにこの病院で治療されて、
でも、もう戻ってこなくて。
もし、彼がもう少し早くに帰っていたら。
もし、私が引き止めなければ。
なら、彼を殺したのは……私か。
君の背中を追って、
僕はこの世界にやってきた。
君がいたから、頑張れた。
君がいたから、強くなれた。
でも君は、先に進むことをやめ、
別の道に行ってしまった。
なぜ?あんなに強かったのに、
なぜ?あんなに頑張っていたのに、
また、一から始めようとするの?
気がついたら、
君がいたところは僕の後ろにあって。
僕は君より強くなってて。
そこに立ってようやく気づいた。
ここは終わりじゃなくて始まりで、
まだ長い人生の最初に過ぎなくて、
これは人生を懸けてするものではなくて、
ただ人生を豊かにするだけの、
付属品に過ぎなかったこと。
だから僕は、また君の背中を追っている。
君のような大人になるために。
好き、嫌い、
花占いをして、
好き、嫌い、
途中で答えがわかってしまって、
好き、嫌い、
別の花に持ち替える。
好き、嫌い、
また始めて、
好き、嫌い、
またわかってしまって、
好き、嫌い、
また違う花に持ち替える。
何度も繰り返して、でも同じで、
でも諦められなくて、また繰り返す。
何度でも、何度でも、
ようやく気に入った答えを見つけて、
やっと掴んだ自信をつけて、
大好きなあの人に言った言葉は。
「私は、大嫌いです。」
あなたを大好きな私が。とっても。
窓を眺める。
今日は曇天、昨夜の雨で出来た水溜まりも、
今日の薄暗い空を映すだけ。
今週は連日の雨らしい。
梅雨の前線が出しゃばってる。
昨日も、今日も、雨だったはずだけど、
今朝の天気予報は曇りらしい。
今日なら、久々の太陽を見れるかなって思ったけど、
朝も、昼も、夜も、太陽は姿を表さなかった。
海岸に行けば、雲の間から差した光が、
海面に反射してきらきら光る。
それでも、太陽を見ることは無かった。
山には、雲がかかってなかった。
でも、昨夜までの雨のせいで地面が緩んでいるからって、
山には入れなかった。
また 見れなかった。
隣の街は、雲が晴れて少し暑いらしい。
でも、私が行ったとたんにくもり始めた。
結局また 見れなかった。
あの人は、雨女の私も愛してくれた。
あの人は、晴れ男でも、雨男でもないのに。
あの人は、私の心を晴れさせてくれた。
あの人は、私の太陽だった。
あの人に、見せたい。
あなたがいなくても大丈夫って。
あの人に、言いたい。
あなたは私の太陽だって。
あの人に、会いたい。
あなたと一緒に太陽を見たい。
でも、あなたはもう居ない。
だから私はいつまでも、雨女のまま。
枯らしたはずの涙が、涙の跡をなぞる。
ほんの少し。雨の匂いがした。
誰とも、ずっと繋がっている。
あなたとも、あなたとも、
離れても、間に壁があっても。
絶対に、切れない糸が繋がっている。
あなたと近づくと、糸が緩まる。
でも緩んだ糸が地面に着くと、
あなたは離れてしまう。
そんなちょうどいい距離が、
上手く付き合うコツ、なんだろうけど。
糸が見えない私には、分からないや。