「ヨシダ、【星が溢れる】ってどんなことだと思う?」
後ろにいる幽霊に話しかける。
「そうやなぁ…星空のことやと思う。逆にあんたはどうや?」
そう問われてしまった。その時、頭に掠めたものを口に出してみる。
「そうねぇ…ふと思ったのは、ドロっとしたもの。」
「…どういう意味や?」
「知らないわよ、そう思ったんだもん。」
考えつくまでぼんやりと過ごしていると、窓で一筋の光が流れて行った。
「あ、流れ星。」
するとヨシダは考える素振りをして、
「…あー、そういうことか。わかったわ」
「なにが分かったの?」
「流れ星や、星が溢れて流れ星ってことやない?」
そう言われて、少し納得した。でもあえて「…何を言ってるの?」と返してみた。
「お前ならわかっとる癖に。」と言ってくるヨシダを見て、随分ロマンチストなんだなって思った。
「ねえねえ、【愛と平和】ってなんだと思う?」
後ろにいるヨシダに声をかける。
「んー、知らん。みんな死なないことやない?」
「まあそうなんだけどね。」
まあ幽霊だからそうだろうと考えていると、
「あ、どっかに平和を願ってって名目のピアノ置いてなかったっけな。」
「ふむ…?一応調べてみるか。」
検索すると、広島県にそういうピアノがあるらしい。
「あーそれやそれ。幽霊になってすぐの頃に行ったんやった。」
「ふーん…ヨシダって今いくつ?」
ふと浮かんだ事を口にする。
「死んだ時はあんたと同じくらいやけど…あんま覚えてないなぁ。西の方で死んで、たまたま見てたのに書いてあったからついでに行ったんや。その後ふらふらしてたらこの家に着いたって感じやけど、それだけの時間はあったってことになるんやけどな。」
「へー…ちなみに私はいくつに見える?」
「うーん…そやなぁ。30行ってないくらいか?」
思いっきり地雷を踏み抜いてきた。
「まだ大学生なんだけど!!」
『うるさいっ!』
隣の部屋からそう言いたげな壁を叩く音が聞こえた。
過ぎ去った日々は変えられない。
諦めて前に進むのみ。
「…でいいかな。」
「今日は短いんだな。」
そう幽霊のヨシダは言う。
「まーそうね。今日は疲れちゃった。」
「そんなことないやろ。ずっと家にいたやないか。」
「……それでも疲れたの!」
ヨシダをぎっと睨む。
「…はいはいわーったよ。」
「はぁ…」
「どしたん話聞こか?」
深夜、部屋でため息をつくと声が聞こえた。
「いやね、今日のおd…」
「それは彼氏が悪いわ〜」
「ちょまて…ってか誰!?」
一人部屋なのに誰かからの返事が聞こえるはずが無い。
慌てて辺りを見回してみると、部屋の隅にぼんやりとした影があった。
「俺か?ヨシダってんだ。…まあ話すのは初めてだからはじめましてからやな。」
「あどうもスズキです……話すの"は"?お互い初対面じゃ?」
「まあ見ての通り幽霊やっているんで、一応地縛霊ってやつ?今までずっと一方的に見てはいたで。」
ふと、変な予感が頭を掠める。
「もしかして…下着姿とか…」
「あー、まー、、そうね、……あんた風呂上がりは下着すら着てないからな…。」
恥ずかしくてうずくまる。だんだんと顔が熱くなって行くのを感じる。
「…一応言うとな、この姿になってから性欲が全く感じなくなってな、、あっ、どの下着もちゃんとにあt」
「いちいち言わなくてよろしい。」
なんかしゅんとしてる幽霊を見て、はあっとため息をつく。
「まあ見られてたものは仕方ない…。で?なんで現れたわけ?」
「…さあ?少なくとも、今まで通り過ごしてたはずだけどなぁ」
「…もしかして」
手元にあるスマホの画面を見る。
【お金より大事なもの】
と書かれている。
…観られてる…?
「おーい?どしたん?」
その声ではっと我に返る。
「…あ、ごめんなんだっけ。」
「しっかりしい。見えるようになった原因に心当たりはあるんか?」
「………いや、わかんない。」
「そうかい。いや、しゃーない。俺みたいな幽霊と話すと疲れるんかもな。今日は休みな。」
「…変なことしないでよ。」
「いままで一度もしたことないやろ…。」
「…何されてもわかんないじゃん。」
「…あ、ほんまやなぁ。」
この幽霊はどこか抜けてる。まあ優しいやつではありそう。
そう思いながら、瞼を閉じる。
「いやまって!」
眠ろうとしたところで飛び起きる
「なんやびっくりしたなぁ。なんかあったんか?」
「いや、今日のお話を書かなきゃでさ、お題に沿ったものを書こうとしたんだけど、全く思いつかなくて。どうすればいいと思う?」
「…いや知らんがな。というより、助けて欲しいならお題くらい教えてくれよな。」
「…あ、忘れてた。お題は【お金より大事なもの】」
「…ふむ、それなら俺が適任やな。」
「なんで?」
「俺の答えは、『肉体』だからや。」
「その心は?」
「そんなもん無い。実体験だからや。何ににも触れられず、声をかけても気づかれず、ほかの幽霊のことも見えない。そんな状態より、誰かと会話ができる肉体があれば1番良い。金を持ってても死んだら意味なんか無いからな。」
「ふーん」
「…お前聞いてないやろ。」
「いや聞いてるし。『愛』だっけ?」
「なんも聞いとらんやないかい。」
去年は2人。
今年は1人。
あぁ、あなたが隣にいないことが。
どんなに辛いことか。
あの時は知る由もなかった。
後悔は募り、涙を誘う。
また会いたいです。
その意味を乗せて。
「月が綺麗ですね。」
どうかお返事ありますように。