そー

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「よーっす、また新しいの持ってきたよ」
持ってきた炭酸飲料の缶を開ける。
「……」
「明日は今までで1番暑い日だってよ」
彼女が持っていた炭酸飲料の缶を奪い取り、今開けたものを渡す。
「……」
「今までも暑かったのにさらに暑くなるとかやんなっちゃうよな」
彼女から奪い取ったぬるい炭酸を飲みながら話し続ける。
「……」
「まあ夏なんてそんなもんか、少しくらい涼しくなってくれてもいいんだけどな」
「……」
「仕事はどうなのかって?最近は食事を届けてくれるサービスのせいで僕のお弁当屋は商売あがったりだよ」
「……」
「そのせいでお弁当は安く売らなきゃ買ってくれる人も少なくてね」
「……」
「あの配達員にもなってみようかな〜って思ったりして」
「……」
「…やだな〜冗談じゃないか」
「……」
「さて、そろそろ行くか。また明日も来るからね」
2年前、僕は彼女を殺した。
彼女が別れを切り出したから。彼女は浮気をしていたから。そして何より、僕が彼女を愛していたから。だから殺した。
彼女は怒っているだろうか、恨んでいるだろうか。
そんなことを考えながら、うだるような暑さの中、仕事に戻るために墓地を後にする。
ふと、背中に行ってらっしゃいと声をかけられた気がした。それだけでほんの少し、許された気がした。

8/4/2025, 8:11:25 AM