セミの声、夏だなぁ。
野球の掛け声、夏だなぁ。
入道雲、夏だなぁ。
揺れる木陰、夏だなぁ
放課後の教室。
窓の外に耽ける。
今日の日を振り返り、涙する。
明日は休みだからと言い聞かせて、
明明後日を考え、またひとつ涙する。
ようやく手枷が外れた。
どこからこんなものを持ってきたのか。
外はもう真っ暗で、コオロギが鳴いている。
血まみれの腕や顔を見て、
どう言い訳しようかと考える帰り道。
教室で目立つ真っ黒な自分の机を残して。
学校の授業が頭に入らない。
昨日もそうだ。
その前も。
なにか知らない"記憶"が頭に入ってきて、
その"記憶"で全てを埋めつくされて、
何も起きていないのに何かが起きたと思ってしまう。
目を開けたまま夢を見ているよう。
今日、事件が起きた。
駅から学校に向かっている途中で通り魔に刺されたらしい。
気がつくと、病院にいた。
幸いにも軽症で、内蔵は無事だった。
問題があるとすれば、前述した所謂"白昼夢"で一度、刺されたことがあるということだった。
その"記憶"では誰かに刺されて、その犯人がテレビで名前を言われていたところまでの記憶だった。
どれを思い出しながら考える。
・いつ起きたか。
・どこで起きたか。
・犯人は誰だったか。
それを思い出したところでテレビでニュースが流れた。
どうやら犯人が捕まったらしい。
私は時刻、細かい場所、犯人の顔や名前。
それを"記憶"と照らし合わせる。
違う。
犯人の顔が違う。名前が違う。目が覚めた時刻が違う。
何より、現実では捕まったとあるが"記憶"ではまだ捕まってなかったはずだ。
そしてもうひとつ。
これからこの病院が、テロの攻撃に遭うという"記憶"が流れ込んできていた。
あなたとわたし。
二人だけ。
二人だけの世界。
私たちは心が繋がっている。
いつまでも、どこまでも、
私たちの間にある世界。
それは総て、わたしたちの世界。
世界中で、たった二人だけが理解できる。
二人だけの。
「あづいぃ…」
昔はもっと涼しかったのに、
今じゃ歩くだけで汗が出るほど外が暑い。
ただの買い物も嫌になるほど、外に出たくなくなる季節。
お向かいさんのお家で育てているヒマワリを見ても、
そのほとんどが暑さにやられてうなだれていた。
あつい
憂鬱な気持ちを我慢して、スーパーに向かって歩き始めた。
何事もなくスーパーに着き、店内に入っていく。
店内は涼しく、さっきまでの憂鬱な気持ちを吹き飛ばしてくれるようだった。
買い物を済ませ、外に出る。
あつい
再びの憂鬱を感じながら家に向かって歩き出す。
その時、とても大事なことを思い出した。
「エアコン…タイマーのセット忘れた……」
最近ずっと何かが付いてきてる。
私の後ろ、ピッタリ10メートル。
多分先月くらいから。
先月、友達に肝試しに誘われて、心霊スポットと有名な隣県の○○トンネルというところに行った。
あんまり乗り気じゃ無かったけど、結局ついて行くことにした。
そのトンネルの前に着いて、みんなで進んでいく。
何か起こるかと思ったけど、何事もなく向こう側に着いた。
少しガッカリしながら来た道を引き返し、何事もなく帰ってきた。
それが原因のように思えてきて、そのトンネルを調べる。
すると、半年前に崩落で入口が塞がれてしまっていたらしい。
じゃあ、私たちが行ったトンネルってどこだったんだろう。
………
今日、お祓いをしてもらった。
でも、今日もあの人は着いてくる。
お寺の人に話を聞くと、「お祓いをしたが、手応えがなかった。やはりまだ残っていましたか。」と言ってた。
ヤブの住職だったみたい。
………
トンネルに、行かなきゃ。
返さなきゃ、
………
奪った。