よつば666

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12/13/2024, 10:12:36 AM

お題『心と心』

 生活指導の教師ことヒ◯ラー似の穴黒(あなぐろ)は有給休暇消費の為休暇中の校長から夏季補習期間中の3日間、学校の見回りを頼まれていた。

穴黒「3日間と言わず、ずっと私(わたし)が校長に代わって再び公務をしても構わないのですがねぇ……」

穴黒はかつてこの学校の副校長だった。先代の病弱な校長に代わって公務を行なっていた。当時の教頭と穴黒はとても仲が悪く言い争いは日常茶飯事。それは教頭と穴黒が目指す生徒と教師の在り方が違っていたからだ。

当時の教頭「毎度毎度同じ事を言わせないでください!!あたくしは教師が生徒を暴力で従わせるなんておかしいと言っているのです!心と心を通わし話し合いで解決すれば良いではないですかっ!?」

穴黒「あの野蛮な生徒(猿達)が言葉を理解出来ないから教師はやむ終えずしてるだけだと言ってるだろう!!」

当時の教頭「まぁ〜!?生徒を猿呼ばわりですって!?もぅ〜っ耐えれません。副校長!あなたにはしかるべき処置をある方に実行して頂きますから!!」

そう言って教頭は辞表と書かれた封筒を副校長に叩きつけ職員室を出て行く。翌日の放課後PTAの会長と副会長、教育委員会の教育長が学校に訪れ生徒に対し暴力で指導したとされる3名の教師と副校長の処遇について言い渡された。

教育長「3名の教師はそれぞれ別の学校へ異動して頂きます。そして副校長あなたはこの学校に残り副校長としてではなく生活指導教師として勤務して頂きます。つまりは役職の格下げ、及び給料を現在の半分に削ります」

穴黒「そ、そんなぁ。し、しかしですね。私が今、副校長を降りたら学校はどうなるのですか!?校長は今、療養中ですし……」

教育長「問題ありません。明後日から急遽別の地方学校より新しく校長が赴任されますのでご安心を。それではこのあと教師の方々には異動先をお伝えしますのでこのまま残って下さい。副校長、いえ穴黒さんは即刻退室し自席を片付け願います」

穴黒「は、はい」

穴黒は席を立ち会議室から出ていく。今考えると当時の教頭の言うことは正しかった。だか、生徒にも非があると私は思っている。教師を舐め腐っていた生徒の態度が許せなかった。素行の悪い生徒を持つ担任がいつも職員室とは別の教室で隠れて泣いているのを私は授業中の廊下の見回りで知っている。生徒を正し道に戻すには時には暴力は仕方ないと私は思っていた。
あとから別の教師に聞いた話によれば当時の教頭は数年前から親しくしているPTAの会長に相談をし、PTAの会長が知り合いの教育委員に直接働きかけていたらしい。当時の教頭はよほど私の事が嫌いで「副校長」という役職を降ろしたかったんだろうなと思うのだった。

End

12/12/2024, 8:50:37 AM

お題『何でもないフリ』

夏季補習3日め朝。学校に着き校舎の内入理、靴箱から上履きに履き替え2階空き教室に向かっていた萌香。
階段を登り、途中の踊り場で両腕を上げて体を伸ばしていた。

萌香「ん〜〜っ。今日で最後かぁ」

すると萌香の背後から大神が声をかけて来た。

大神「おはようさん!萌香(子猫)ちゃん。こんなとこでボケーっと立っとたら遅刻すんで(笑)」

萌香「お、大神君!?おはよう!え、嘘!?遅刻?」

萌香は慌てて階段を駆け上がり走って空き教室まで向かう。教室の扉を開け一歩踏み出し––––。

萌香「間に合った〜」

と言いながら席に着く。隣の席に座る大神はくっくっくと笑いを堪えているが次第にあはははと大笑いし始めた。

萌香「何かおかしいことあったの?」

きょとんとした顔をする萌香。大神は笑いながら教室に飾られた時計を指差す。萌香は大神が指し示す方へ目をやる。

萌香「8時10分……遅刻じゃ……ない!?」

大神「子猫ちゃん騙されやすいタイプやなぁ。気をつけなあかんでぇ(笑)」

萌香「き、今日はたまたま油断しただけだもん!」

大神「今日はっていつも誰かに騙されとるんか?」

萌香「騙されてません〜」

この3日間大神と毎日会う中でだんだん仲良くなっていった二人。萌香は大神の前でただの補習仲間として好意のないフリをしていたが、内心はずっと心臓がバクバクしていたのだ。

3時限終了後萌香は、意を決して大神に伝える。

萌香「大神君!連絡先教えて!!」

End

12/11/2024, 6:03:29 AM

お題『仲間』

 夏季補習2日めが終わり、学校の校舎を出ると制服のズボンのポケットから昭和時代を思い出す黒電話風のレトロな雰囲気漂う着信音が鳴り響く。
大神はズボンに手を入れ携帯電話を掴み取り出し、携帯の液晶画面を見た。画面上に【バイト仲間の矢座(やざ)先輩】と表示されている。大神は電話に出た。

大神「お疲れ様です。どないしたんですか!?」

矢座『どうしたもこうもないさ。お前大丈夫か!?』

電話から聞こえてくる矢座の声はとても心配し焦っていた。一体何があったのだろうと大神は動揺している矢座を落ち着かせる為に冷静に問うた。

大神「俺は大丈夫ッスよ。先輩、何かあったんですか?」

矢座『大丈夫なら良いんだ。取り乱して悪いな。……昨日店長(マスター)から大神の話を聞いたんだ。お前……他校の生徒タコ殴りにして停学なっていたらしいじゃねぇか。3日間バイト来れないのは停学になった分を補う為に補習受けてんだろ。……うぅっ。なんて優しい学校なんだ(泣)』

矢座は大いなる勘違いをしているようだ。いや、これは店長の悪ふざけだろう。バイト先の店長はユーモア溢れる人だ。しかし時々度が過ぎて悪ふざけが出てしまう困った人でもある。今回の犠牲者は真面目で優しい矢座先輩だった。こういう人の中には話の内容によって冗談が通じなくて本気で信じてしまう。

大神「矢座先輩。それ店長の嘘っス。俺他校の生徒殴ってないですし、停学にもなってません」

矢座『えぇ〜〜〜っ!?……ほ、本当に?』

大神「ホンマです。店長に説明したんやけどなぁ。俺、1学期の期末で赤点三つ以上取ってしもうたからなんっスよ」

矢座『なんだそうだったのか(笑)。……オレは店長の話まともに受けてしまったんだね……。そうか、教えてくれてありがとう。大神、あと1日補習頑張れよ!』

大神「はい。こちらこそ心配かけてすんません」

矢座『気にするな!学生は勉強が優先だからな。おっとそろそろ仕込みの時間だから電話切るな。じゃぁ』

ここで矢座と電話のやり取りは終わった。
数時間後、同じバイト先の仲間から矢座が怒って店長をシメている写真が数枚に渡りメールで送られて来たのは言うまでもない。

End

12/10/2024, 2:51:01 AM

お題『手を繋いで』

 2日目の夏季補習が終わり。家に帰る為電車に乗車した。昼前だというのに今日はやけに乗客が多く、目に入るのは仲睦まじい恋人同士である。

『あぁ。あたしも彼氏が出来たらあの人達のように手を繋ぎたいなぁ』

萌香は心の中で思った。目に映る恋人同士は互いの指と指が絡まった恋人繋ぎなのだ。
4、5分程乗車していると【浜独活岸前(ハマウドがんまえ)】という駅で多くの恋人達は電車を降りた。
あっという間にガラガラになった車内を見て、気になり携帯で駅名をネット検索してみた。
公式HP(ホームページ)を発見し読み進めていく。
どうやら今日は浜独活湾岸でサマーフェステバルが開催されている。
開催日程期間は……。今日まで、当日限りカップル様限定企画。しかも小さな文字で20歳未満は入場禁止と表記されている。会場ではお酒を無料で振る舞うらしい。
頭の中で合点がいく。だから電車はいつもより混んでいた。それに飲酒するなら車は運転出来ないからだろうなぁと思う萌香だった。

End

12/9/2024, 4:25:08 AM

お題『ありがとう、ごめんね』

 3月上旬。兄、源星(りげる)の中学校卒業式が終わった翌日の夕方。当時小学4年生だった真珠星(すぴか)は学校から帰って来ると赤いランドセルを家の玄関に近い廊下に置いたまま遊びに行く癖があった。
真珠星と入れ違いにパートから帰って来た母親がそのランドセルを見て腹を立たせた。

母親「あの子は!何度言えばわかるの!?」

数年前から夫の転勤が多く幾度となく繰り返される引っ越し、近所からの冷めた眼差し、そしてワンオペ状態の子育てに長男の反抗期が重なり精神的に病んで泣いてばかりいた母親の姿は今、見る影もないくらい本来の活発な性格を取り戻している。
何故、精神的に病んでいた母親(彼女)が看護のパートに就けたのか。それは真珠星が小学2年生の頃、夫の転勤がようやく落ち着いた半年まで遡る。夫が彼女(妻)の姿を見かねて上司に相談したところ、会社の役員が長期在籍を承諾してくれたのだ。

上司「今まで会社の為を思って勤務に励んでくれてありがとう。そして君の家族を巻き込んでしまって申しない」

上司は部下である夫(父親)に頭を下げた。
それから半年後つまり1年経った頃今のパートに就職が決まり現在に至る。
___________________

真珠星は午後18時頃家に帰って来た。玄関を開けると腕を組んで仁王立ちで待っている母親が居る。怒られる気配を感じた真珠星は、そっと玄関のドアを閉めようとしたが、逆におもいっきりドアが開らかれ逃げ出さないよう真珠星の腕を掴み引っ張り上げて部屋の中へ押し込んだ。そして––––。
低く唸るような声で話す。

母親「何処へ行(ゆ)く」

リビングで正座させられ説教の時間が始まった。一方的に喋る言葉の数々。時折聞き慣れない四文字熟語が飛び交う。真珠星は反論したくてもその隙がないので、下を向いたままうん、うんと頷くだけである。
最後に母親は言った。

母親「廊下に置かない!!誰かが怪我をするでしょ。ランドセルは机の横に付いているフックにかける。それくらいやってから遊びに行きなさい!」

真珠星「…………。」

母親「返事は?」

真珠星「……はい」

母親「他にもいうことあるでしょ」

真珠星は部屋の隅に置かれた勉強机に目をやった。するとランドセルが机の上に置かれていた。

真珠星「ランドセル、ありがとう。そしてごめんなさい」

母親「はい。……次からはしないでよ」

と言ってキッチンに向かい夕食の調理に戻った。

End

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