お題『仲間』
夏季補習2日めが終わり、学校の校舎を出ると制服のズボンのポケットから昭和時代を思い出す黒電話風のレトロな雰囲気漂う着信音が鳴り響く。
大神はズボンに手を入れ携帯電話を掴み取り出し、携帯の液晶画面を見た。画面上に【バイト仲間の矢座(やざ)先輩】と表示されている。大神は電話に出た。
大神「お疲れ様です。どないしたんですか!?」
矢座『どうしたもこうもないさ。お前大丈夫か!?』
電話から聞こえてくる矢座の声はとても心配し焦っていた。一体何があったのだろうと大神は動揺している矢座を落ち着かせる為に冷静に問うた。
大神「俺は大丈夫ッスよ。先輩、何かあったんですか?」
矢座『大丈夫なら良いんだ。取り乱して悪いな。……昨日店長(マスター)から大神の話を聞いたんだ。お前……他校の生徒タコ殴りにして停学なっていたらしいじゃねぇか。3日間バイト来れないのは停学になった分を補う為に補習受けてんだろ。……うぅっ。なんて優しい学校なんだ(泣)』
矢座は大いなる勘違いをしているようだ。いや、これは店長の悪ふざけだろう。バイト先の店長はユーモア溢れる人だ。しかし時々度が過ぎて悪ふざけが出てしまう困った人でもある。今回の犠牲者は真面目で優しい矢座先輩だった。こういう人の中には話の内容によって冗談が通じなくて本気で信じてしまう。
大神「矢座先輩。それ店長の嘘っス。俺他校の生徒殴ってないですし、停学にもなってません」
矢座『えぇ〜〜〜っ!?……ほ、本当に?』
大神「ホンマです。店長に説明したんやけどなぁ。俺、1学期の期末で赤点三つ以上取ってしもうたからなんっスよ」
矢座『なんだそうだったのか(笑)。……オレは店長の話まともに受けてしまったんだね……。そうか、教えてくれてありがとう。大神、あと1日補習頑張れよ!』
大神「はい。こちらこそ心配かけてすんません」
矢座『気にするな!学生は勉強が優先だからな。おっとそろそろ仕込みの時間だから電話切るな。じゃぁ』
ここで矢座と電話のやり取りは終わった。
数時間後、同じバイト先の仲間から矢座が怒って店長をシメている写真が数枚に渡りメールで送られて来たのは言うまでもない。
End
12/11/2024, 6:03:29 AM