お題『夫婦』
学校から帰って来るとリビングから女性の啜り泣く声が聞こえる。
萌香は、恐る恐るリビングの扉を開けると……。
そこには面識のない太ったおばさんが泣いていた。
萌香「だ、誰?家間違えた??」
萌香の頭の中はパニックだ。静かにリビングの扉を閉め玄関の方へ歩きドアに手を掛けた瞬間ガチャりとドアが開いた。萌香はドアに引っ張られそのまま入ってきた人とぶつかってしまった。
萌香の母親「あら、大丈夫?萌香」
聞き慣れた声、顔を上げると母だった。萌香は幼い少女に戻ったように母親に抱きついた。
萌香「マ、マミィ〜💦」
萌香の母親「どうしたの?何かあった?」
萌香「り、リビングに知らないおばさんがいるの!?」
萌香の母親「萌香覚えてないの?2件隣の町内会の会長さんよ」
萌香「覚えてないよぉ。ってかその会長さんがどうして家にいるの?」
玄関で母親と話しているとリビングにいる会長がこちらにやってきた。
会長「輪通(わづつ)さん、どうなさったの?」
萌香「すみません。娘がちょっと怖いものを見たらしくて」
会長「そうなの?今、すごく良いシーンだから静かにしてくれるかしら」
萌香の母「は、はい。すみません。私、外で娘と話して来ますね(苦笑)」
そう言って萌香の母は萌香を連れて玄関の外を出た。
母親の話を聞く限り、会長は昼過ぎに夫婦喧嘩をしたらしい。夕方になっても自分の家に帰らない為、さっき会長の家に行って、旦那さんに家に帰って来るようにお願いして来たのだった。
会長の旦那「妻が長居してすみません。今から連れて帰りますので、家の中にお邪魔してもよろしいでしょうか?」
背が低く、紳士のように優しい声の老人が萌香の母に尋ねた。
萌香の母「えぇ。会長(奥様)はリビングにいらっしゃいますよ。玄関から右にある部屋がリビングです」
会長の旦那「そうですか。ありがとうございます」
会長の旦那は軽く会釈し、萌香の家へ入って行った。
数分後旦那と共に会長は萌香の家から出てきた。
会長「輪通さん、お邪魔しました。お茶菓子美味しかったわ。ご馳走様」
会長は機嫌良く旦那と腕を組んで自分の家へ帰って行った。どうやら仲直りしたらしい。
ご近所の話によると会長夫妻はつまらないことでいつも喧嘩するらしく、今回は昼ドラと高校甲子園のTVを観る権利の争いだったのである。
End
お題『どうすればいいの?」
夏季補習生の発表が職員の掲示板い貼られた金曜日の5時限終了後の休憩中、僕は授業で出題された宿題をしていた。その時血相変えた大神が僕の席に来て勢いよく机を叩いた。そして珍しく落ち込み、吊り上がった眉がハの字になって悲しい顔を僕に向ける。
僕はかける言葉を探した。
船星「どうしたの?」
大神「聞いてくれるか船星!俺な、これからどうしたええと思う?」
疑問を疑問で返されても、全く理解出来ないでいると生徒Aが大神に変わって説明してくれた。どうやら大神の名前が夏季補習生の中にあったらしい。夏休みは全てバイトに費やすつもりだったみたいで今更バイトのシフトを変更して貰うのは難しいかも知れないと嘆いている。
船星「僕にどうすればいいか聞かれても困るよ。ここは素直にそのバイト先に説明して、シフト変えて貰うしかないんじゃないかな」
大神「せやな。俺、頑張って交渉してみるわ。ありがとう。あ、そう言えば、職員室の廊下で萌香(子猫)ちゃん見たで、なんや悲しんでたり、喜んでたり。表情コロコロ変わって忙しいそうやったわ(笑)」
船星「そ、そうなんだ。あの子も補習生なのかな?」
大神「分からんわ。俺ら名前知らんしな」
チャイムが鳴り休憩が終わった。そして6時限が始まった、僕は慌てて宿題を机の中にしまい教科書を机の上に置くのだった。
End
お題『宝物』
※自作キャラ達に再びインタビューしてみました。キャラクターも増えましたし……。
作者『あなたの宝物はなんですか?』
萌香「マミィから譲り受けたペンダント」
真珠星(すぴか)「小学生の時白鳥(しらとり)さんから貰った押し花のしおり」
委員長(かろん)「家族(祖父母)かな」
船星(ふなぼし)「最初で最後の家族旅行の写真です」
大神「小学生の時に獲った優勝トロフィー」
生徒B(まるた)「サイン入りサッカーボール」
生徒A「スパイク(バスケ用)」
校長「あ、またインタビューですか。えっと……妻には内緒で買った名水が湧き出る壺です」
作者『え?水が湧き出る壺!?校長それ詐欺ですよ。実際に水湧き出ました?」
校長「まだですけど……私、騙されたんですか?」
作者『絶対騙されてます。早くクリーグオフして下さい!』
校長「そ、そんな!?無理ですよ。もぅ30年も前に買ったものですし(泣)どうしましょう〜」
作者『私に言わないで下さい(他にも騙されて買っていそうだな)今後怪しいモノは買うのをやめればいいだけですよ。校長』
校長「そうですね。気をつけます。あ、そう言えばこの前家族が幸せになるという水晶が買える広告を見つけましてね……」
この後永遠と校長は水晶について語り出した。
作者は逃げるようにその場を去ったという。
萌香「今回のインタビューを終わりまぁす!」
End
お題『キャンドル』
夕方になって大神達は家に帰って行った。
誤解を解く為僕は思っている事を正直に大神に話した結果、彼の解釈はやはり僕はあのBBQの時、萌香(子猫)ちゃん達に「“ナンパ“しようとしていた」という事になってしまった。
船星(ふなぼし)は大きく溜息をついて、客間とキッチンを掃除している。
船星「あのやり取りはなんだったのだろう。今日はすごく疲れた」
掃除が終わり、愚痴をこぼしながらリビングへ向かい北欧風デザインの三人掛けソファの真ん中に座った。
手前には大理石風の楕円形ローテーブルが置かれその上には母親がインテリアとして鹿の形をしたキャンドルが飾られている。
船星はそう言えばと思い、ソファから立ち上がりTV台にある引き出しからマッチの箱とアロマキャンドルを取り出した。それを楕円形テーブルの上に置く。
マッチ箱からマッチを1本取り出しマッチ箱の側面についている側薬(そくやく)を擦り、火を起こす。マッチに火が点き今度はアロマキャンドルに火を点ける。マッチの火を手を仰いで消し水の入った、コップへ移す。
しばらくするとアロマキャンドルからほんのり森林の香りがしてきた。
僕は少し部屋の明かりを暗くてアロマキャンドルの中の小さな火をぼんやり眺めることにした。
End
お題『たくさんの想いで』
休日明けの月曜から1学期の期末テストの結果が教科ごとに順次返却され、本日金曜日の昼休み休憩後に夏季補習生の発表が職員室前の掲示板で張り出されることになった。萌香達は5時限終了後10分という短い休憩を使い職員室前の掲示板を見に来ていた。
萌香『どうか、補習生に入っていませんように』
萌香は心の中で祈りっている。掲示板から少し離れた距離で真珠星(すぴか)達は萌香を見守っていた。
返却されたテストの結果を見れば、掲示板へ行かなくても一目瞭然なのだが、安心感を得たいのだろう。萌香と同じように数人ほど自分の名前を探している。
5分後俯いた顔で萌香は戻って来た。心配になった委員長が萌香に声を掛けた。
委員長「輪通(わづつ)さん、どうだったの?」
萌香は顔を上げ委員長の問いに答えた。
萌香「……名前……あった」
真珠星「本当に?」
萌香「うん……。やだよ〜補習〜」
萌香は涙目になって真珠星に抱きついた。
真珠星はやれやれと言わんばかりに萌香の頭を撫でる。委員長が優しく萌香に声を掛けた。
委員長「輪通さん、補習が終われば夏休みが始まるじゃないの。予定が合えば一緒に遊びましょう。私(わたくし)輪通さん達とたくさんの想いでを作りたいわ」
萌香は委員長の言葉で元気を取り戻し、真珠星から離れ委員長の両手を握りぶんぶんと上下に振りながら感謝していた。
End