よつば666

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お題『夫婦』

 学校から帰って来るとリビングから女性の啜り泣く声が聞こえる。
萌香は、恐る恐るリビングの扉を開けると……。
そこには面識のない太ったおばさんが泣いていた。

萌香「だ、誰?家間違えた??」

萌香の頭の中はパニックだ。静かにリビングの扉を閉め玄関の方へ歩きドアに手を掛けた瞬間ガチャりとドアが開いた。萌香はドアに引っ張られそのまま入ってきた人とぶつかってしまった。

萌香の母親「あら、大丈夫?萌香」

聞き慣れた声、顔を上げると母だった。萌香は幼い少女に戻ったように母親に抱きついた。

萌香「マ、マミィ〜💦」

萌香の母親「どうしたの?何かあった?」

萌香「り、リビングに知らないおばさんがいるの!?」

萌香の母親「萌香覚えてないの?2件隣の町内会の会長さんよ」

萌香「覚えてないよぉ。ってかその会長さんがどうして家にいるの?」

玄関で母親と話しているとリビングにいる会長がこちらにやってきた。

会長「輪通(わづつ)さん、どうなさったの?」

萌香「すみません。娘がちょっと怖いものを見たらしくて」

会長「そうなの?今、すごく良いシーンだから静かにしてくれるかしら」

萌香の母「は、はい。すみません。私、外で娘と話して来ますね(苦笑)」

そう言って萌香の母は萌香を連れて玄関の外を出た。
母親の話を聞く限り、会長は昼過ぎに夫婦喧嘩をしたらしい。夕方になっても自分の家に帰らない為、さっき会長の家に行って、旦那さんに家に帰って来るようにお願いして来たのだった。

会長の旦那「妻が長居してすみません。今から連れて帰りますので、家の中にお邪魔してもよろしいでしょうか?」

背が低く、紳士のように優しい声の老人が萌香の母に尋ねた。

萌香の母「えぇ。会長(奥様)はリビングにいらっしゃいますよ。玄関から右にある部屋がリビングです」

会長の旦那「そうですか。ありがとうございます」

会長の旦那は軽く会釈し、萌香の家へ入って行った。
数分後旦那と共に会長は萌香の家から出てきた。

会長「輪通さん、お邪魔しました。お茶菓子美味しかったわ。ご馳走様」

会長は機嫌良く旦那と腕を組んで自分の家へ帰って行った。どうやら仲直りしたらしい。
ご近所の話によると会長夫妻はつまらないことでいつも喧嘩するらしく、今回は昼ドラと高校甲子園のTVを観る権利の争いだったのである。

End

11/23/2024, 9:01:41 AM