miru

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4/23/2025, 3:44:36 AM

big love(前編)

その日は唐突に訪れた。
私はいつものように朝起きると飼い猫「ギンタ」のもとへと朝の挨拶をしにベッドから出た。

キッチンでギンタを見つけて撫でるために近付く。
するとギンタが口から大量のヨダレを垂らしていることに気付いた。
私はそれを見て血の気が一気に引いていく感覚が襲ってきた。

急いで動物病院に連れて行くと、「もう1ヶ月も耐えられないかもしれない」と言われてしまった。
朝の様子から覚悟はしていたものの、改めて専門家の人に言われると胸が苦しくなった。

「1ヶ月間誰かが側に居てあげれるようにしよう」ということが家族で決まり、幸い母が専業主婦ということもあり、昼は母がそばに居て、夜は学校から帰ってくる私ということになった。

学校から帰ると毎日ギンタに薬をあげて、痛みが少しでも和らぐように撫でるという日々が続いた。

それから1ヶ月。
ギンタは医者が言った余命1ヶ月を乗り越え、さらには前よりも元気になっているように感じた。

嬉しく感じたが、ここで油断してはならないと思い、今までの1ヶ月と同じように薬をあげながら側に居てあげるようにした。

それからまた2ヶ月が経った。
元気になっていたのも束の間、定期的に薬をあげていたもののギンタは段々と弱ってしまい、ついには歩くときもフラフラとするようになってしまった。

食べ物も上手く喉を通さなくなってしまい、大好物だったおやつすら少し食べて辞めてしまうというようになって、段々と身体が痩せ細っていった。

4/22/2025, 9:00:16 AM

放課後の教室。
日が沈んでいくのが教室の窓から見える。

教室には僕の他に人はおらず、それぞれ部活や家路に向かったのだろう。
1人静かな教室で沈んでいく夕陽を眺める。

僕の耳元でボクの声が囁いてくる。
「君が居なくても皆んな個人の日常を過ごすだけ。」

教室で1人そんな声を聞いていると、教室のドアがガラガラッと大きな音を立てて勢いよく開いた。

姿を現したのは隣のクラスの友人、僕の姿を見付けると満面の笑顔になって口を開く。
「まだ教室に居て良かった〜!一緒に帰ろ!!」
そんな元気の良い声に自然と笑みが溢れる。
僕は鞄を持つと友人のもとに駆け寄った。

もうボクの囁き声は聞こえない。

4/21/2025, 5:29:44 AM

僕が歩くべき道筋を星明かりが照らし出す。
「君はこの道に進むべきだ」
「この道を進んだほうが将来は安泰だ」
「私達はそれで成功してきたんだ」
「君はこの道以外ありえない」

そうか、僕はこの道を進めば成功するのか。
皆んながそう言うなら僕も同じ道を進むことにしよう。
【皆んな】が言うんだから。



違う


ただ一つ、様々なカタチに姿を変える月明かりが僕を照らし出す。
ただそれだけ、何の言葉も掛けずに【僕】を照らしてくれた。

眼を閉じて深呼吸をする。
今まで星明かりに照らされて僕が歩いてきた道を、【僕】が存在しなかった道を思い返す。


ゆっくりと眼を開けて再び空を見上げた。
空には燦々と輝いている【皆んな】があるだけ、声はもう聴こえない。

ありがとう

それだけ言うと【僕】は歩き出した。