"神様だけが知っている"
神様にだって一つくらい分からないもんがあってもよくね?
例えばさ、「普通」とか。
神はこの世の全てを知っているとは限らない
なにが普通で、なにが異常なのか
運動神経がそこそこのあいつは本当に普通なのか
家を持たないホームレスたちは異常なのか
愛想がいい空元気なあの人は普通なのか
コ〇フ〇デン〇マンの世界へようこそ
いや…、この世界へようこそ
みたいな?笑
…でもまあ、この世に生まれたからには「普通に生きる」ことを求められる。まず「普通」ってなんだ?「生きる」ってなんだ?
大人はそれをやってのけているフリをしている。
俺的には「普通」っていうのは、この世に生きる人間が、「これが普通」「これは異常」ってエゴを押し付けてできた概念なんだと思う。
そんな概念を全て詰め込んだ空間が、俺たちが生きる世界なんだろうな。
普通がどこまでの範囲なのか、そんな概念を考えた俺たちすら分からないから、きっと神様にだって分からないな。
"神様も知らないこと"
_2023.7.4「神様だけが知っている」
「ちょっと心理テストしていいか?」
「えー、内容によるよそれは」
「まあ聞けって。…あなたは暗い道を歩いています。近くにトンネルがありますが、向こうで誰かが手を振っています。その人は誰か思い浮かべてください」
「んー…トンネルの向こうで誰かが手を振ってる…?」
顎に手をやり、考え込んで、「あ、」と声を漏らし、顎から手をひかせ言った。
「きみ、かなあ」
「……マジで?」
「うん、きみしか思い浮かばない。きみ以外いないな。」
「…この心理テストでわかることって知ってるか?」
知ってたら…と思うと、心臓がドクドクして苦しい。
「えー?なに?教えて?」
少し悪そうに口角を上げて笑う。こいつ、からかってるな。
自分でもわかる。自分が今、どんな顔してるのか。多分、りんごみたいな…。
「……あぁもうはずかしいからこのほんかってによんでろ…ばか…」
………の心理テストで分かるのは……
あなたの運命のヒトです♡
どう?当たった………
_2023.7.3「この道の先に」
「わたし、日差しはなんだか苦手だなあ」
「どうして?」
「あなたみたいに、眩しすぎるわ」
「僕なんかより、君の方が眩しいさ」
「あなたはわたしを救ってくれた命の恩人よ。何をそんなに自分の価値を低く見るの?」
「君には僕が神様だと見えていても、周りの人には僕が変人と見えるだろう?」
「そんなの関係ないわよ。どっちにしろ、あなたはわたしの太陽よ」
「ときどき、眩しすぎて目を背けてしまうこともあるけれど。それでも、あなたの心が暖かいことは分かってるわ。わたしに、十分すぎるほどの愛をくれたわよね。
わたしは、そんなあなたが大好きよ。」
「…ありがとう。でも、いつか別れが来るかもしれないことは、分かっていてくれよ?」
「僕は人殺しだからさ。」
「……ここに、現場から検出された人殺しの男の情報だと思われるものが。」
「なるほど。…こんなこと言っちゃ皮肉だが、この女、かわいそうだな」
「ですね。そして、この男は逮捕されるひと月半前、女に『君へのさいごの愛だ』と言って、キンセンカの花を手渡したそうです。
反対に女は男が逮捕される前、ヒヤシンスの花を手渡した、とされています。」
「キンセンカ…花言葉は確か……
『別れの悲しみ』だったか?」
「ヒヤシンスの花言葉は、『あなたとなら幸せ』です。」
_2023.7.2「日差し」
「あ、猫だ」
俺の友人冬水が言う。窓の奥を見ていたので、俺もそちらに視線を移してみた。
「ほんとだ。なんか俺みてえじゃね?」
「そうだね。袈裟田みたいに白くて青い眼をしてるし」
袈裟田、とは俺のことだ。俺は生まれながらのアルビノ?(実は俺はあまりよく分かっていない)で、白い髪に青い眼を持って生まれてきた。
最初こそ周りの人間と違うところがある、と自分で思い自分で傷ついた。だから俺には冬水くらいしか友達と言える人間がいなかった。
「あ、黒猫来た」
「黒猫はお前か。なんか俺ら二人みたいだな」
そうだね、と笑う冬水。窓の向こうの猫は、黒猫が白猫を追いかけていた。
「でもさ、白猫は黒猫を避けてないか?」
「え?…あ〜…ほんとだ」
「…無理してないよね?袈裟田のことは親友だと思ってるし、袈裟田が自分で思うほど傷つかなくても大丈夫」
「君は僕のたった一人の親友だ。」
「もっと人に頼れ、一人で荷物を抱え込まずに僕にもちょっとくらいは分けてくれ」
「……前から、お前と少し壁作ってた自覚はあった。
冬水。じゃあ、これ持っててくれるか?」
「もちろんさ。」
君は僕のたった一人の親友だよ。
_2023.7.1「窓越しに見えるのは」
もう一個思いつきました。どうぞ見ていってください。
「ねえ、君は窓越しに何が見える?」
そう問いかけても、君はただ窓の向こうを明るく振舞って笑いながら見ているだけ。
彼女は数日前、結構大きな病気を患った。病院に入院したため、最近の僕は、大学の授業が終わったら、真っ先に君に会いに行くことが習慣になっている。
彼女には僕の声が届かない。
耳が聴こえないのだ。
そんな君に、僕はあるサプライズを考えた。
当日。彼女は驚きの表情を浮かべた。彼女が見ていた、その窓の向こうには_
「あ」「い」「し」「て」「る」
と書かれた紙を、彼らが持っていた。
病院の近くにある公園でいつもサッカーをしていた子供。ベンチに座っていた老夫婦。それを見守っていた看護師さん。
僕の声にこの言葉を乗せて君に伝えられなかったのは残念だったけど、
僕と君には、これで十分だった。
_2023.7.1「窓越しに見えるのは」
「赤い糸?アレか?『たーてのいとはアーナター、よーこのいとはワータシー』…違うのかよ、歌って損だわ。
そんで赤い糸?だっけ?そんなのあるわけねーじゃん。
だってアレだろ?そういうのはお熱い世の中のカップルさんたちが言うような言葉だろ?
俺たちには無縁だわ。」
そう言っていた俺が、ついに、ついにこの俺に、赤い春がやってきた。
赤い春ってなんだよ。赤い糸だろ。そして春は青い春だろ。なんだよ赤い春って。もうどうでもいいよ。なんか混ざってるけど。俺こんがらがってるな。
赤い春でいいよもう。
ただ、その片想いの相手には、赤い糸が見えないらしい。
だったら俺が見せてやるよ。
赤い春をよ。
_2023.6.30「赤い糸」